髙柳雄一館長のコラム

2017年02月14日一覧

ダイアモンド富士~定点観測の楽しみ

 我が家の寝室にある南西向きの窓から、視界が良いと富士山の頂上を占める台形部分が見えることに気がついたのは、住んでからだいぶ経ってからでした。窓越しの景色の中で、普段は地平線の細部にまでこだわって眺めることはあまりありません。雨戸を開けたり締めたりする時には自然に空の様子にも注意が集中しますから、家々の屋根がまばらになる通り道が生み出した地平線の窪みの中の台形状の姿が目に止まるようになりました。そんな体験を重ねた挙句に、あれは富士山なのだと確信するに至ったことを思い出します。

 今年の冬は、それが富士山の頂上部分の台形であることを確認することもできました。1月30日の日没時に、我が家の窓からダイアモンド富士を眺めることが出来たからです。先にも書いたように、これが富士山頂上の部分であることを確信できたのは、夕方、日没直後の地平線で、それが富士山頂上のシルエットであることに気づいたからでした。それだけに、ひょっとしたら我が家でも窓からダイアモンド富士が見えるかもしれないと言う期待は以前から持っていました。

 それが実現したのは、多摩六都科学館の天文チームの方にそれがいつ頃になるかを調べて教えて頂いたからです。地図の上で示した我が家の位置は大まかなものでしたから、教えて頂いた日取りは1月31日頃と言うことでした。この予想に対応して1月28日から、夕方は毎日、窓から地平線上の日没の位置を注目して眺めました。そして、日没の太陽が地平線に沈む位置が毎日少しずつ富士山頂上の台形部分に近づくことを確認できたとき、予想通りにダイアモンド富士が我が家で見えることを確信したのです。そして、幸いなことに西の地平線上に厚い雲がない1月30日の夕方、それが実現したのです。

 我が家からダイアモンド富士を眺めることが出来たことで、私にとってこの窓から見える地平線上に姿を留める富士山の頂上部分は、窓から外を見るときいつも注目する場所の一つになりました。その結果、発見したこともいくつかあります。
 その一つは、早朝、窓を開けたとき視界がよいと、朝日に照らされて赤味を帯びて白く輝く富士山頂の姿まで見えることです。富士山頂と我が家の間にある地平線付近の地上風景が富士山の裾野の視界を遮っているお陰で、富士山頂付近だけが見事に姿を見せていました。また、朝に見る富士山頂に対して、日没時に見るシルエットでの富士山頂も、吹雪いているかのような揺らめく影の動きも見えるときがあることにも気づかされました。

 我が家の窓から、地平線上に富士山頂を眺めて想像を広げて行くと思いはどんどん膨らんでいきます。それは見えない部分についても富士山について知っている知識が想像の翼を与えてくれるからかも知れません。昔、学生の頃、科学の定点観測で私たちは世界をどこまで理解できるかを考えたことを思い出します。現在、日没時の太陽が沈む地変線上の場所は富士山頂からどんどん離れてきました。やがてまた富士山頂に近づき始めるまで、我が家の窓から見える景色を楽しみながら行く春を楽しみたいと思っています。

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