髙柳雄一館長のコラム

2018年07月16日一覧

梅雨明けに思ったこと

梅雨明け後の各地では連日猛暑が続いています。テレビや新聞で、西日本豪雨による水害被災地で実施されている炎天下の復興活動の様子を見る度に、今年の梅雨前線が西日本にもたらした豪雨被害の稀に見る凄まじさを思い出し、亡くなられた多くの方々のご冥福と、今後の被災地での復興活動の推進を祈念しています。

前回、個人的な梅雨の思い出を書きました。今年の梅雨は沖縄、さらに奄美に次いで、先月、関東地方でいち早く明けました。しかし7月になっても、梅雨前線の影響が九州、四国、中国、近畿、東海の地域には残りました。関東の梅雨明け後も、西日本で梅雨が続くという例年と異なる気象状況に不思議な気もしていました。そして大規模豪雨の後に訪れた西日本の梅雨明けは、猛暑日の炎天下に甚大な水害を受けた被災地を残したのです。

西日本豪雨をもたらした梅雨前線の状況は、西日本が豪雨に見舞われるかなり前からテレビやラジオ、新聞などのマス・メディアで広く一般社会に伝えられてきました。日本全国の人々がテレビなどで、その成り行きを見ていたに違いありません。この史上稀にみる記録的豪雨は、気象庁によると梅雨前線の停滞と活発化、それに向かって暖かく湿った空気が多量に流れ込んだことが要因となったと言います。
詳しくみると、7月5日から8日頃の気象情報ではオホーツク海高気圧と太平洋高気圧に挟まれた形で西日本上空に梅雨前線が停滞していました。この停滞した梅雨前線が活発化したのは、台風7号から変わった温帯低気圧の影響と太平洋高気圧の勢力が強まり、南風に伴う暖かく湿った空気が流入し、同時に東シナ海付近の水蒸気を多く含んだ空気が南西風に乗って流れ込んだためだと言います。

当時の気象情報でも指摘された積乱雲が線状に連なって豪雨をもたらす「線状降水帯」が発生した気象状況はこのように梅雨期特有の日本列島を取り巻く気圧配置に加えていくつもの要因が重なった結果、大量の雨を西日本に局地的にもたらしたことがわかります。
今回の豪雨、上空の気象状況の要因はまとめて説明されていますが、地上の水害による被害状況は地域ごとに大きく異なっています。堤防の決壊などで町の全域を占める家屋の一階部分が水没した被災地、大量の土石流の侵入により破壊された集落など、地上の被災状況は被災地ごとの山や川の配置など地形に大きく影響されていることが分かります。

気象情報によって前もって予測された豪雨も、そこに住む人々にとって地域ごとに被害を避ける手段は大きく異なっていて、短時間で対応する避難対策の難しさが想像できます。上空ではある特異な気象状況の推移が、地上では地域ごとの地形に対応して異なる水害をもたらしているのです。地上に住む私たち人間には、上空の気象情報は共有できても、それが地表にもたらす災害を予測し、それに備えるには、自分たちが住む地域の地形など地域特有の情報が不可欠であることが分かります。

西日本豪雨の甚大な被害を残した今年の梅雨明けは、地上に住む私たち人間にとって、足元を知ることの大切さとその困難さを改めて思い出させてくれた様な気もしています。

線状降水帯_s気象衛星ひまわりの画像(7月6日14:30)