髙柳雄一館長のコラム

新年を迎えて

新しい年を迎えました。明けましておめでとうございます。
太陽を回る地球の公転で春夏秋冬が一巡りする一年は、私たちが生きてゆく上で、地上の生命活動のリズムとも重なり、人生の時間を考えるには、意識しやすい時間の間隔になっています。その意味で誕生日とは違いますが、お正月は多くの人々にとって年を重ねる実感が伴う季節にもなっています。
誕生日は個人的に意識される時間の区切りですが、お正月は、地球に住む多くの人間が、過ぎ去った一年を思いだし、それが今に繋がる喜びと、新たに未来に広がる一年を意識する時間の区切りであることが大きな違いです。それに気づくと、昔から人々が使ってきた「新年、あけましておめでとう」と言う言葉が持つ、深い味わいも感じることができるでしょう。

私にとっては幾度も迎えたお正月ですが、何度迎えても、お正月はいつも新しい何かを期待できる機会を与えてくれます。地上で流れる時間はいつも同じなのに、年末は師走の例えでも言われるように速く感じます。元旦を迎えた後、新年が始まると、私たちは、未来に広がる、ゆったりとした時間の存在に気付かされます。
その結果、さあ、今年は何を目標として、それに向けた計画をしっかり立ててようと、新しいカレンダーを眺め、予定を書き込んだりする気持ちにもなります。これはお正月の持つ独特の雰囲気がもたらすものだと思います。
考えてみると、人間が自由に意識的に使える時間はいつも未来に限られています。そんな時間の存在を、お正月は地球に住む多くの人間に気づかせてくれる貴重な機会になっていると言えそうです。

一般に、人間にとっては時間の流れは不変なのに、どうして年末年始でこんな違いが生まれるのでしょうか? そんな疑問が起こるのは、お正月の休日で日頃の様に時間に追われないからだからだと言えるかもしれません。でも、こんな人間と時間との関係に思いを馳せてみることが出来るのも、お正月の賜物だとも言えそうです。皆さんはどう思われますか?
新年を迎え、新しく未来に広がるこの一年、皆さんにとって今年も素敵で有意義な一年となることを期待しています。
最後に多摩六都科学館からの年賀状をご覧頂き、年初のコラムとさせて頂きます。

年賀状2016_ペガ

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髙柳雄一館長

高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)

1939 年4月、富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科 学系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフプロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。

2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)