ロクトリポート

11/8(土)開催「X線観測で迫るブラックホールの激しい活動の謎」Q&Aを大公開

講演会の様子はコチラ

講演会では参加された皆さまから大変多くの質問をいただきました。
志達先生のご厚意により、会場でお答えできなかったものも含めて、後日多くの質問にお答えいただきましたのでこちらにQ&Aを掲載します。

興味深い質問と回答ばかりですので、講演会にお越しでない皆さまもぜひご覧ください。
また、最後には研究者を目指す学生さんに向けてアドバイスもいただいています。

それでは、長くなりますがどうぞお付き合いくださいませ♪

目次
①ブラックホールの特徴・特性・現象などについて
②MAXI・XRISMについて
③X線観測と解析について
④今後の展望&担当スタッフからの質問

①ブラックホールの特徴・特性・現象などについて

<ブラックホールについて>

Q, ブラックホールはそもそも、なぜ回転しているのですか?

A, ブラックホールの元になった星が自転していると、それを受け継いでブラックホールも自転します。また、降着円盤の回転するガスを吸い込むと、その角運動量(まわる勢い)も加わります。

Q, 観測結果からブラックホールの回転方向もわかりますか?

A, ブラックホールの時点については、右回りでも左回りでも、スペクトルは同じように時間変化するはずなので難しいです。
ブラックホールの公転運動とジェットの歳差(首ふり)運動の回転方向が同じか違うかは、相手の星によるジェットの掩蔽(隠され方)のようすを見ると区別できる可能性があり、XRISMによる観測で明らかにしたいと考えています。

Q, ブラックホールの個数は増え続けているのですか?
また、ブラックホール自体は減ったりしますか?

A, ブラックホールの数はどんどん増え続けていると思います。
星の一生の中で、(重い星の場合)最終的に超新星爆発(大爆発)を起こしてブラックホールが生まれることと、宇宙では新しい星が生み出され続けていることから、星の進化の過程を考えればどんどん増えていくはずです。
一方で、非常に難しい話ですが、ホーキング放射というものによってブラックホールは長い年月(※ブラックホールの質量に依りますが、現在の宇宙の年齢をはるかに超える時間)をかけて質量を減らして、やがて消滅していくと考えられています。

Q, ブラックホールの特異点には体積というか、形のある星のようなものがあるのですか?

A, 自転していないブラックホールの場合、質量が一点に集中しており、体積はありません。自転している場合はリング状になりますが厚みはなく、やはり体積はありません。

Q, ブラックホール周辺のガス成分はほとんど鉄ということですか?
(講演内でのX線観測の成果として鉄輝線のピークを発見したことに対して)

A, 鉄ばかりというわけではありません。
X線で輝線や吸収線として見える元素は、鉄などの比較的重い(原子番号が大きい)元素になります。水素などの軽い元素は紫外線や可視光など、もう少し低いエネルギー帯域で輝線や吸収線が見えるので、X線で観測できるのは必然的に重い元素になります。重い元素の中で宇宙に比較的たくさんあるのが鉄なので、鉄の輝線や吸収線がX線帯域では一番よく見えると言うことになります。

Q, ブラックホールは時間のゆがみが強いはずということは、ブラックホールの近くに1時間いると地球では1年経つということが起こるのですか?

A, はい、そのようなことが起こります。
ブラックホールの表面に近づくほど、一般相対理論の効果により、遠くから見ると時間が遅れて見えます。

Q, 光っていないブラックホールが天の川銀河内に一億超以上あるというお話でしたが、これは観測、理論どちらのアプローチによってわかったことなのですか?

A, 理論と観測の情報を組み合わせた予測として、それくらいの数があると考えられます。
星の進化の理論から、非常に重い星からブラックホールが作られることがわかっています。天の川銀河には星が数千億個あり、ブラックホールが作られるような重い星の割合や、それぞれの進化段階の星の割合を考えると、1億個くらいはあると考えられます。

<ジェット・ウインドについて>

Q, ブラックホールの「なんでも吸い込む」と「ジェットを出す」の相反する現象はなぜ起きるのですか?(同様の質問多数)

A, 「なんでも吸い込む」のは、ブラックホールの強い重力(引力)による効果です。
「ジェットを出す」のは、落ちてくるガスの一部に外向きの力が働いて加速されるためですが、その原因はいまだにわかっていません。降着円盤からの強い放射による圧力や磁場の影響(ジェットにそってらせん状に磁場が巻き付いており、その磁場が降着円盤やブラックホールの回転とともに高速で回転することで、ガスが一緒に回転して遠心力により吹き飛ばされる)など、いくつかの説が提唱されていますが、まだどの説が正しいかはわかっていません。

Q, ジェットが出るブラックホールとウインドが出るブラックホールとでは何が違いますか?

A, ジェットやウインドの噴出には、ブラックホールに落ちるガスの量やブラックホールの回転などが関係していると考えられています。同じ天体を観測しても「ジェットが出てくるタイミング」と「ウインドが出てくるタイミング」というものが実はあることがわかっており、ジェットやウインドが噴き出しやすくなる条件がありそうです。今後XRISMなどでより詳しく観測していくと、「何が違うのか」という点にも迫れると期待しています。

Q, ジェットやウインドで放出されるガスの成分は、連星となる構成によって変化したりするものですか?

A, 相手の星から落ちてきたガスの一部がジェットやウインドとしてふき出すので、その成分は相手の星の表面の元素量に左右されます。それぞれのX線連星のジェットやウインドにどのような元素がどれだけの割合含まれているかについては、XRISMによる観測が進めば明らかになってくると思います。

Q, ジェットとウインドが、銀河と銀河中心にあるブラックホールの形成やサイズに関係しているとの事でしたが、たとえば銀河の中の球状星団の分布とかには関係してくるのですか?

A, ジェットやウインドが銀河内のガスや星と衝突することで、星団の形成や進化(その結果として現れる星団の分布など)に関係している可能性はあると考えられています。これからの観測で、ウインドやジェットがどのくらいの物質・エネルギーを噴き出しているのかが明らかになっていけば、その影響の理解も進むと思います。

<ブラックホールX線連星について>

Q, ブラックホールX線連星は「急に明るくなる」とのことでしたが、どうして”急”に起こるのですか?

A, X線の明るさは、基本的にブラックホールに落ちていくガスの量で決まるため、その量の時間変化が明るさの変化になります。
ブラックホールX線連星では、ペアの星から吸い取ったガスが降着円盤にたまっていき、ある程度溜まると一気にガスが落ち(※ししおどしのようなものをイメージいただけると良いかと思います)、その瞬間に急激に明るくなるのではないかと、理論的に考えられています。

Q, X線連星はガスを吸い取られ続けて、最終的にはどうなるのですか?

A, 相手の星からブラックホールに落ちていくガスの量から推定すると、一般的には、相手の星のガスが無くなるよりも、その星が最期を迎える方が早いので、最終的にはコンパクト天体どうしの連星系になると考えられます。

②MAXI・XRISMについて

Q, 2013年だったかのキロノヴァは、MAXIで観測されましたか?

A, MAXIでは残念ながら観測できませんでした。数時間後くらいに観測したのですが、MAXIの感度では検出できないほどの暗さになっていました。
あと数分ほど早く発生していれば、その領域を観測していたので、X線放射を検出できた可能性があります。次の機会を狙っています。

Q, MAXIで発見した明るい天体が、ブラックホールなのか中性子星なのか白色矮星なのか、どのように区別するのですか?

A, 一番確実なのは、質量を測ることです。相手の星の動きを調べることで、コンパクト天体の質量を制限できます。(※中性子星・白色矮星にはそれぞれ質量の上限値が決まっており、観測から得られた質量からどの種族かを判定できます。ただし、相手の星が非常に暗い場合はこの手法は利用できません。)
あるいは、時間変動(※中性子星の場合、ミリ秒~数百秒の周期的なパルスが見えることがあります)や、スペクトル(※中性子星の場合、降着円盤からの放射に加えて表面からの放射がX線帯域に見えます。白色矮星の場合、降着円盤は主に可視光や紫外線で輝きます)の特徴がコンパクト天体の種類によって異なるため、これらの情報をもとに判断します。

Q, M87のジェットはXRISMで観測されましたか?

A, M87はXRISMでも観測されました。ジェットが噴き出している銀河中心の領域も含めて幅広い領域を観測し、スペクトルの解析から、ジェットが周囲のガスに与える影響などが明らかになりつつあります。ただし、XRISMの空間分解能(画像上の細かい構造を識別する能力)では画像上でジェットを見ることは難しそうです。

Q, XRISMの成果が出てきている中で、「これも載せておいてほしかった」もしくは「載せておいてよかった」という機能や機材はありますか?

A, 搭載して良かったと私が思うものはXtend(視野の広いCCDカメラ)です。
Resolveのほかにもう一つ何を載せましょうかという議論の中で、広い視野のCCDカメラを搭載することになりました。XtendはResolveよりも視野が広いため、Resolveで長い時間をかけてある天体を観測しているあいだに、その天体の周囲に広がった構造を同時に詳しく調べることができます。また、たまたまその視野で起こった突発現象をたくさん見つけることにも成功しています。MAXIなどの全天モニタに視野の広さは劣りますが、はるかに暗い天体まで金出することができ、XRISMに載せてもらえてよかったと思っています。

Q, Resolveの観測寿命はどのくらいですか?/液体ヘリウムが枯渇したら観測は終わりですか。それとも宇宙空間での補充計画があるのですか?

A, 液体ヘリウムが全て蒸発するのが、打ち上げられてから3年程度と見積もられています。
宇宙空間でのヘリウムの補充は難しいです。ただし、ヘリウムが枯渇した後も、XRISMに搭載された冷却装置をフルパワーで動かすことで、現在とあまり変わらない性能を維持し続けることができるように設計されています。予期せぬ問題が起こらない限り、10年くらいは観測が続けられるのではないかと期待しています。

③X線観測と解析について

Q, X線による観測結果をもって、ブラックホール内で物質がどのように動いているのかを物理学者は考えているのですか?

A, X線の観測結果と物理学の基礎理論を比較することで、ブラックホールの周囲の物質の動きや状態、時空の構造などについて明らかにしようとしています。ブラックホール表面(事象の地平面)より内側からは電磁波が出てこないので、ブラックホール内部というよりは、ブラックホール周囲を調べています。

Q, 重力波で見つかっているブラックホールの合体で、X線は観測できたりしますか?

A, 現在重力波で見つかっているブラックホール同士の合体は、太陽質量の数倍~数十倍程度のブラックホール同士の合体で、基本的には他に何もないところで漂っている2つのブラックホールが合体するため、電磁波をほとんど出ないとされています。実際、MAXIなどでモニターはしていますが、今のところ検出できていません。

Q, 講演の中で鉄輝線の話が出てきましたが、以前に「巨大質量ブラックホール天体で鉄輝線が歪んでいるのは時空のゆがみを表している」という研究についての議論があったと思います。あれについて結論は出たのですか?

A, ブラックホールのすぐ近くから出てくる鉄輝線は、アインシュタインの相対性理論の効果(時空のゆがみ)により幅が広がり非対称な形状になることが理論的に予言されています。
本当に幅が広がったり歪んだ形状になったりしているのかというのは、これまでずっと決着がつかずにいましたが、Resolveで観測すると、細い輝線や吸収線(ブラックホールから遠く離れたガスから生じるもの)に加えて、幅の広い成分が確かにあることが明らかになりました。Resolveの結果を踏まえると、ブラックホール近傍の相対論の効果が捉えられていると言って良いと思います。

④今後の展望&担当スタッフからの質問

Q, 衛星観測ですと台風が来ていてもできそうなので、天気関係なく昼夜も関係なくできそうですが、先生の仕事時間は昼夜どちらが多いですか?

A, 私はどちらかというと夜型人間で、昼間は大学の授業や会議などがあるので、夜に研究していることが多いです。衛星のデータは電波で地上に送られ、インターネット上から入手できるようになっているので、時間を問わず研究を進めることができます。

Q, 時空のゆがみがこうして見えてくるということは、重力波望遠鏡との相互観測も期待できそうですね(髙柳館長の発言より)

A, 相互観測の対象は、X線でも重力波でも見える天体でないといけませんが、現在の重力波望遠鏡では超巨大ブラックホールを見ることができません。ただし、地上でなく宇宙空間に置いた重力波望遠鏡(衛星)が5~10年後の打ち上げを目指して現在計画されており、これを用いると超巨大ブラックホール同士の合体も観測できるようになると期待されます。周囲にガスが大量に存在する銀河中心で超巨大ブラックホールの合体が起これば、X線でも観測できるかもしれません。

Q, 11月25日に「ガンマ線観測からダークマターの正体がわかったかも」という内容の東京大学のプレスリリースがありましたが、X線分野としてはダークマターなどは関係あるのでしょうか?(スタッフより)

A, 非常に関係あります。
特にXRISMは、ダークマターを調べることも大きな目的のひとつです。X線で銀河団に分布する高温のガスの運動を調べることで(その運動はダークマターが引き起こす重力により決まっていると考えられるので)、ダークマターがどのように分布しているのかについて情報が得られると期待されます。

Q, これから興味・関心をもって研究の道に進みたいと考える学生さんに向けて、先生のご経験からアドバイスなどいただけますでしょうか(スタッフより)

A, 研究の道で特に大切なのは、知的好奇心と粘り強さだと思います。実験や観測が思うように進まなかったり、理解できない結果が出たりすることはよくあります。それでもあきらめずに考え続け、試行錯誤する姿勢が重要です。わからないことや疑問に思うことを「面白い」「楽しい」と感じる気持ちが、そのための大きな原動力になります。基礎をしっかり学びつつ、未知のものにワクワクする気持ちを大切にしてほしいです。

Q&Aは以上です。

質問をお寄せいただいた皆さま、ありがとうございました。

そして、たくさんの質問にお答えくださいました志達先生、本当にありがとうございました。先生のさらなるご活躍とMAXI・XRISMのさらなる活躍をお祈りしております。