ロクトリポート

2/22(日)開催「有人宇宙活動を支える宇宙火災安全技術の最前線」

今回の講演会は、「宇宙の最新研究2025」第2弾!

多摩六都科学館では毎年、前年度に公益財団法人 宇宙科学振興会が主催する『宇宙科学奨励賞』を受賞された研究者をお招きして講演いただいています。

『宇宙科学奨励賞』とは
宇宙科学分野で優れた研究を行っている若手研究者を顕彰する目的で、宇宙理学と宇宙工学の2つの分野から毎年1名ずつ選出されます。

講師は、宇宙工学分野で受賞された、
岐阜大学 工学部 機械工学科 准教授 小林 芳成(こばやし よしなり)先生です。

▲講演会のようす

講演タイトルは

「有人宇宙活動を支える宇宙火災安全技術の最前線」

私たちの生活を脅かす災害のひとつ「火災」。
地上でも重大な脅威ですが、宇宙船内は限られた空間で”逃げ場がない”ことから、火災は<三大インシデント>のひとつに位置づけられています。そのため、宇宙船に使用される材料や機器の燃えやすさを評価する試験が行われていますが、宇宙環境での燃えやすさを適切に評価するには、まだ課題があるようです。

今回は、地上と宇宙でのモノの燃え方の違いを中心に、そもそも「モノが燃えつ」とはどのような現象なのかを理論的に解き明かすお話と、小林先生が取り組まれているFLAREプロジェクトについてお話いただきました。

「FLAREプロジェクト」とは?
FLARE(Flammability Limit at Reduced Gravity)は、JAXAをはじめ国内外の研究機関や大学が共同で進める、宇宙火災安全の新たな国際基準づくりを目指した研究プロジェクトです。将来の有人宇宙活動を支える“宇宙火災安全の基盤”を築くことを目的としています。

地上と宇宙の大きな違いといえば「重力」です。
ろうそくの火を例にすると、地上では熱によって温められた(比較的軽い)空気が上昇し、冷たい(比較的重い)空気が重力に従って炎の下へと流れ込む「自然対流(=空気の流れ)」が生じます。一方、宇宙の無重力環境ではこの空気の流れが生まれないため、炎は球状に近い形になります。

小林先生は、地上と宇宙における環境の違いを、空気の流れる速さに着目して研究されており、周囲の流速が速すぎたり遅すぎたりすることで火が消える「吹き飛び消炎」と「ふく射消炎」という2つの現象を理論的に説明されました。また、宇宙船内では安全性や運用上の理由から、地上とは異なる酸素濃度が設定されます。
これらのことから、「周囲流速」と「酸素濃度」を変数として火が消える条件を数式化することで、理論的な消炎条件を示すグラフを描くことができるとのことでした。

現在は、その理論的な消炎条件が正しいのか調べるため、国際宇宙ステーション(ISS)において実証実験が進められています。しかしながら、材料によっては理論で予測された結果と一致しない場合もあり、必ずしも理論どおりにはいかないという課題もあるとのことでした。

今後、この理論と実際の現象との整合性がさらに高まれば、大規模な実験や宇宙での検証を行わずとも、材料の耐火災性をより正確に評価できるようになります。これにより、より安全な有人宇宙活動の実現が期待されます。
さらに、宇宙(無重力)だけでなく、月(地球の重力の約1/6)や火星(地球の重力の約1/3)への人類の進出を見据えた後続プロジェクトとして、FLARE-2やFLARE-3も計画されているとのことです。

将来、私たちが宇宙に行けるような時代には、小林先生が開発されている新しい材料の燃焼性評価方法が当たり前になっているかもしれませんね。FLAREプロジェクトの今後の進展に期待しましょう!

講演会の後半では、参加者からの質問にお答えいただきながら、髙柳館長とともにお話を深掘りしました。

小林先生のご厚意で、講演中に回答しきれなかった質問にもご回答いただきましたので、Q&Aを公開いたします。
また、当日の簡易版の資料もご用意いただきましたので、内容を振り返りたい方、気になった方はQ&Aと合わせてご覧ください。
※複製や他者への提供などは禁止とさせていただきます、ご了承ください。

2/22(日)開催 「有人宇宙活動を支える宇宙火災安全技術の最前線」Q&Aを大公開!

講演会スライド資料pdf

改めまして、ご講演いただいた小林先生、共催としてご協力いただいております宇宙科学振興会の皆さまへ厚く御礼申し上げます。

ご参加いただいた皆さまもありがとうございました。