髙柳雄一館長のコラム

時の姿をみる

2012.12.02 12:11:17
テーマ:館長コラム 

12月になりました。日没の早さが気になり、夕方の駅前や街の広場では、色鮮やかなイルミネーションで描かれたクリスマスの飾りつけを仕事帰りに楽しむことができます。
役立つ日時も少なくなった今年のカレンダーを眺め、年内に残された日々の予定や行事を考えると日頃気にしなかった時の歩みの速さを意識させられます。
毎年、毎月、毎日、時の流れは同じはずなのに、なぜか年末になると時の流れが気になるのか不思議ですね。

uid000119_201212021508555907de4e↑館内のクリスマスの飾り付け

多摩六都科学館に勤めて以来このコラムを書き続けてきました。その中で取り上げたテーマを振り返ると、12月と1月のコラムは、いつも時間について書いて きたような気がしています。年末年始という人間が決めた時間の区切りが、日頃、時の流れを意識しない人間に「時間」への注意を喚起するせいかもしれませ ん。
今回も「時間」のことを書いてみます。

今年は、天文現象の当たり年でした。
宇宙の話題が大好きな皆さんはすぐ思い出されたでしょう。
まずは、5月21日の朝、日本では25年ぶりに見られた金環日食です。朝早く、多摩六都科学館の駐車場に集まって、太陽が月に隠されて見せる金の輪をご覧になった方も多いことと思います。
次は6月6日に起こった金星の太陽面通過でした。こちらの方は生憎、関東地方では天候不順で見られなかった方が多いようです。
最後は8月14日の未明、金星の前を月が通過して金星を隠したいわゆる金星食でした。

uid000119_20121202151030bc06dc26今年を振り天文現象を取り上げましたが、天文現象は「時間」のことを考えるとき、色々な視点を与えてくれます。天文現象はそれをどこで見るか「場所」が重要ですが、「場所」が決まると、地点によってその現象が見える「時間」、むしろ時刻が決まります。
天文現象は「時間」を指定しないと確定できません。
今回の金環日食が日本で25年振り、次回の金星の太陽面通過は2117年11月12日となるとか言われることが、そのことを示しているでしょう。
天文現象は人間に時間を意識させる宇宙からの贈り物とも言えるのです。

uid000119_20121202151134dba16af4 ↑1987年9月23日(沖縄)以降25年ぶり。次回は18年後、2030年6月1日(北海道)。

人間は時間を使ったり、時間に追われて生活したりしていますから、時間の存在を認めていると言えます。 しかし、時間とは一体何でしょう。 存在を認めているのに姿を見ることができない不思議な存在です。
しかし、それが流れていることは、時計がなくとも時間で姿を変えてゆく現象から判断できます。 天文現象は宇宙の遠い世界の出来事ですが、その変化は見事に時間の流れを示す存在です。宇宙にある物質は生成し消滅して行きますが、それは時の姿でもあるのです。
宇宙を見るとき、私たちは時間を見ているとよく言われます。 地上の世界も勿論、この宇宙の中にあり、その関係は変わりません。12月になって、時の巡りに合せて変化する人間社会の年末光景も、地上での時の姿を示しているのだと考えると愉快になります。

クリスマスとお正月を迎える月、12月を子供たちは楽しく使い、大人は予定と行事に追われ、12月に使われていると思うことがあります。 12月、時間に使われていると感じたとき、宇宙からの視点を使って、そんなことを思い出してみては如何でしょう。

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髙柳雄一館長

高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)

1939 年4月富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科学 系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフ・プロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。

2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)



季節の移ろいを楽しもう

2012.11.15 12:20:05
テーマ:館長コラム 

夜半を過ぎると星の世界にも冬の星々が目立つ季節となりました。
季節の移ろいが見えるのは空ばかりではありません。
地上では、ようやく色付いた木々の紅葉が目に付く季節となり、秋から冬への時の流れを気づかせてくれます。
日常生活に追われて身の周りの世界に注意が限られているせいか、生活の中で季節の推移に気付かされるのは、日頃は見逃している世界を、ちょっとした機会に注意して眺めた時が多いようです。

uid000120_201211131720344a2547c1秋の気配に気づいたのはいつからだったか、考えてみるとはっきりとは思い出せないものです。
いつの間にか、公園や戸外で出会う木々の緑に、これまでとは違う紅葉の色合いを感じる機会が増えて、秋だなと感じるようになった気もします。          

もっとも、私が利用する京王線では、高尾山の紅葉まつりがはじまったという駅や車内の広告を至る所で目にするので、今年の秋の紅葉に気づかされたのは自然環境からだけではなく、社会的環境からの情報も無視できません。


現代の都市で生活する人間にとって身の回りの環境変化を知る機会は、自然界よりも、例えばマスメディアの紙面や画面で目にする季節のイベント情報、11月7日に迎えた立冬を伝える情報など、社会的環境の方が多くなっているのも肯けます。          

その点で、自然界の細やかな季節変化を楽しみ、同時に季節の移ろいをいち早く知ることが生活を豊かにする「生きる知恵」となっていた、お爺さんやお婆さんたちの頃に比べて、季節の変化に対する態度も生活の営みの中で変わってきているのかもしれません。

 季節の変化を、自然界だけでなく社会の動きの中でも知る時代に住む私たちですが、変化する季節がもたらす自然の恵みを楽しむことでは昔の人と変わりません。
紅葉狩りへの案内ポスターを見て、初冬の自然に触れる旅の計画を立てる人も多いでしょう。

uid000120_20121113172122eed0122f宇宙の話題から地上の話題へ変わる今月のコラムを書きながら、自然の中で季節の移ろいに気づき楽しむ人間の習性にあらためて気づかされました。
考えてみると、太陽の周りを回る地球にすむ生き物たちは、生命誕生以来、巡る季節の変化の中で、子孫を残し生き延びる知恵を育んできました。
その中で、季節の変化を楽しむ習性を身につけた人間の営みに思いをはせるのも紅葉狩りの楽しみを広げてくれるような気もします。

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髙柳雄一館長

髙柳 雄一 (たかやなぎ ゆういち)

1939 年4月富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科学 系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフ・プロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。

2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)




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