髙柳雄一館長のコラム

天と地からみる地球の夜空

2013.02.05 10:57:59
テーマ:館長コラム 

2月になって、日差しには春の到来を感じる時もありますが、夜になると一等星が多く見える冬の夜空を楽しむ方も大勢いらっしゃることと思います。そんな時、都会に住んでいると肉眼で見える星の数も限られます。見つけたい星座を探すため暗い夜空の見える場所を探した方もいらっしゃるでしょう。
夜の照明が私たちの生活を支えていることを考えると、都会の夜空から暗闇が減っていくのもうなずけますが、無駄な照明をできるだけ避けて欲しいと感じることもあります。

地球の夜空が闇を失うことで、生活リズムが狂うのは人間ばかりではありません。動植物も生息環境が変化し、夜間の光による生態系の被害も報告されています。地球の夜空が人工の光から受ける環境被害を光害(ひかりがい)と呼んでいます。光の害は星の研究者や天文愛好家ばかりが被っているとは言えないのです。

星座の中に見える星の数を世界各地から報告してもらうことで、夜空の明るさを地球規模で調べる国際的観察キャンペーンがあることを知りました。地球規模で考えるとき、「グローバルに見ると」と言いますが、英語の「グローブ」は地球を意味しますので「夜の地球」を観察するこのキャンペーンは「グローブ・アト・ナイト」と呼ばれています。興味をお持ちの方はインターネット検索で「Globe at Night」と「光害」などと入力すると日本語のウェブサイトで活動内容を詳しく知ることができます。

このキャンペーンは2006年、アメリカ国立光学天文台が中心になって始めたものです。2009年には「世界天文年」の取り組みとなり、国際天文学連合、ユネスコなどの事業の一つになり、その後は毎年実施される国際的キャンペーンとして定着しています。昨年は92カ国から1万6,850件もの観察報告が集められ、世界地図の中に比較された夜空の明るさ分布が記されています。

このキャンペーンで星の数を観察する星座は、開始以来、世界の多くの場所で比較的見つけやすい「オリオン座」が選ばれてきました。世界中から観察報告を求める期間は、肉眼で夜空の星を見つける邪魔になる月明かりを避けています。今年は1月3日~12日、1月31日~2月9日、3月3日~12日になっています。星座としては昨年から春の星座「しし座」による観察報告期間も設けられています。

昨年、報告が多かった国はキャンペーンが始まったアメリカからで6,000件以上、次はインドでおよそ2,500件もありました。以下、ポーランド、アルゼンチン、ドイツ、韓国、中国、チリ、クロアチア、ルーマニアと続き、日本からも85件が報告されています。
地上で、世界中の市民が参加する夜空の明るさを知る試みは、光害の状況をお互いに意識し、過剰で不必要な人工照明の使用を控えるキャンペーンになることも期待できます。

最後に、地上でみる地球の夜空観察に対して、衛星が捉えた宇宙から見た地球の夜の明るさ分布をご覧に入れましょう。
いずれもNASAの地球観測ウェブサイトから見つけたものです。ここに示した宇宙から見る地球は夜側を捉えた画像ですが、地球上で人間が多く活動する地域が光の広がりと連なりで見事に示されています。

nasa-3 nasa-2 代替です

最後に宇宙から見たインド大陸を入れておきました。インドから2500件も「オリオン座」の観察報告があったことを考えると興味深く見ることもできるでしょう。

uid000119_20130205151719937282b6

今回は、地上からみる夜空と宇宙から見る夜空の話題をご紹介しました。現代に住む私たちが楽しめる天地明察の試みかもしれませんね。
そんなことを思いながら、今夜も晴れたら冬の星空を楽しんでください。

——————–

髙柳雄一館長

高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)

1939 年4月富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科学 系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフ・プロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。

2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)



大きな「ほうき星」がやって来る

2013.01.09 16:05:52
テーマ:館長コラム 

houkiboshi_01

新年おめでとうございます。年が変わると、住んでいる世界まで改まったように感じるのは不思議な気がします。気持ちを新たにして物事を始める時に感じる清々しい気持ちを多くの人と共に持てるからかもしれません。理屈はともかく、子供の頃からいつも楽しくお正月を過ごしてきました。 そんなお正月の楽しみのひとつに、これから1年に期待できる色々な事柄に思いを馳せて想像する喜びがあります。 多くの皆さんと一緒に期待して想像を楽しめる出来事と言えば宇宙の話題があります。 昨年は5月に日本で25年振りの金環日食を、九州から四国、関東地方の広い地域で観ることができました。 また6月には金星が太陽面を通過する現象など、いくつもの宇宙の話題があり、

多くの皆さんが年始から期待して準備し、場所や天候に恵まれた方々は観察したことで忘れられない思い出を持たれたに違いありません。今年も、そんな期待を持てる宇宙の話題があります。肉眼でも見える可能性を持った大きな「ほうき星」の出現です。

houkiboshi_02日本の夜空に出現が予測されているのは、春と秋から冬にかけて現れる二つの「ほうき星」です。

春に出現する「ほうき星」はパンスターズ彗星と呼ばれています。3月10日頃、太陽に最も接近し、通過後の3月中旬は日没後、下旬以降は日の出前の夜空に出現するはずです。この彗星が太陽へ近づくと、どれだけ輝きを増し巨大な尾を引くか、日本の夜空でどのように見えるか、まだ不明な点も多いようです。多摩六都科学館プラネタリムの天文チームも最新情報を用意してお知らせする予定です。春休みの大きな話題になるでしょうね。

秋から冬、年末に出現する「ほうき星」はアイソン彗星と呼ばれています。11月28日頃、太陽に最接近します。この彗星は、春の彗星に比べはるかに太陽近くに接近し、通過後は地球にどんどん近づきます。そこで地球の夜空で大きな「ほうき星」の長い尾を真横から見ることも期待されています。年末に出現するこの彗星は肉眼で眺められる大彗星となると予測されています。天から届くクリスマスの贈り物として皆さんもご期待下さい。

「ほうき星」に関して私には色々な思い出があります。1986年春、76年振りに地球の夜空に出現したハレー彗星に関してはNHKでいくつもの特集番組を担当し放送しました。この時は番組全体のまとめ役で、私自身は空の条件の良い現場での撮影には参加できず残念でした。しかし、その後NHKでの「ほうき星」番組に関係し、1996年にはアリゾナで百武彗星を、さらには1997年にはモンゴルでヘール・ボップ彗星などの大彗星を空の条件の良い現場で眺めることができました。それ以来、大きなほうき星を見る機会を持てませんでしたが、今年は運がよければ二つの「ほうき星」を眺められる機会が訪れる素晴らしい年になりそうです。

夜空に長い尾を引く「ほうき星」の姿は一度目にしたら忘れられない思い出になります。今年の「ほうき星」への期待と想像を楽しむため手元にある資料から、歴史上の大彗星の姿を紹介しておきます。

一つはドイツにあるニュールンベルクの街のお菓子の箱に描かれた1577年秋に出現した大彗星です。この「ほうき星」は有名な天文学者ティコ・ブラーエが観測したことでも知られています。

houkiboshi_03uid000119_2012122709572901e29c64

↑以上4点の画像=ドイツのお菓子のパッケージより。星空に大きなほうき星が描かれている。

もう一つはフランスのバイユーにあるタペストリーに描かれた大彗星です。これは1066年春、イングランドのハロルド2世王がノルマンディー公ウイリアム1世との合戦中、夜空で目にした不吉な「ほうき星」として描かれています。この大彗星は後にハレー彗星であることが確認された有名な画像です。

uid000119_2012122709595437cafa21

↑1066年のヘイスディングスの戦いを描いたタペストリー。

夜空に広がる大きな「ほうき星」を、同じ年に二つも眺められる年になるのかどうか、過去の見事な「ほうき星」の姿を眺めると、春と秋の大きな「ほうき星」出現への期待がさらに高まるような気がします。宇宙の話題を楽しむには地上の平和が不可欠です。                             

皆さまにとって、この1年が素晴らしい年となりますよう願っています。そして、多摩六都科学館が皆さまにとってさらに魅力ある世界として過ごせる場所となるよう一層の努力をしていきたいと思っています。

——————–

髙柳雄一館長

高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)

1939 年4月富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科学 系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフ・プロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。

2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)




前のページへ最新2425262728|29|30最初次のページへ

ページの先頭へ戻る