早春を告げる梅の花に出会うと、皆さんが春の花として次に開花を待ち遠しく思うのはサクラでしょう。二月も下旬に入ると、気象情報の時間でも、桜前線が話題となってきました。今年は東京で桜が開花するのは3月19日頃とされていましたが、花見を楽しむ満開は3月も下旬の後半となり、例年と同様に年度末の行事とも重なってきます。
開花から満開へ、そしてやがて散り行くサクラの花は、時の経過が生き物にもたらす止むことのない変化、生きていることに不可欠な寿命の存在を印象深く際立たせてくれます。過ぎ行く春を桜の花見で過ごして来た日本人にとって、3月の終わりは、時の経過がもたらす学業や事業など人間の営みの移り変わり、場合によっては人生の節目ともなる年度末に当たります。
年度末の思い出を振り返ると、学生時代は卒業、進学で学友との別れを何度も体験してきました。社会人になってからは、転勤や職場の異動にともなって、それまで仲間として共に仕事をして成果をあげてきたき友人との別れを何度も経験しています。そんな思い出の中には、満開を迎えた花見をして別れたこともあり、3月も終わりを迎えると、人生の節目ともなった年度末の数々の思い出が、サクラの花見の思い出と共に蘇ることにも気づかされます。
今月のコラム、3月を花ごよみで辿る季節変化から、人間社会の学業や人事で辿る年度末がもたらす、生きている人間にとっての自然と社会の時の移ろいの存在を重ねてみました。ありがたいことに、サクラの花で終わることなく、さらに年度を超えて続く花ごよみ同様に、人生の節目ともなる年度末も新年度へと続きます。私たち人間にとって、別れの機会ともなる年度末ですが、さらに続く新年度は、学業では進学、進級、入学、人事では入社、新しい職場での活動など、新たな学友、職場仲間との出会いへと続きます。
年度を超えた皆さんの思い出にも、新たな出会いで巡り合った友人、時には人生を共にするパートナーとの出会いもあるかもしれません。そんなことに気づくと、年度末は人生の節目ともなる別れ、それに続く出会いの機会ともなっています。年度末を迎え、皆さんが、今年も素敵な思い出をいくつも紡がれるようにと願っています。
雑木林ゾーンの片隅に植えられた梅の木に、たくさんの花が今年も咲いています(2026年2月28日)
高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)1939 年4月、富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科 学系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフプロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。
2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)











