髙柳雄一館長のコラム

天と地で楽しむ季節の移ろい

2017.05.18 19:08:51
テーマ:館長コラム 

 5月はじめの大型連休も終わり、夏の長いお休みまで、多くの方々にとって通学、通勤など、普段の日常生活を基本とするシーズンになりました。それだけ身の回りの世界を意識する機会も増えたのかも知れません。道端で出会うハナミズキの花の様子や、街角の生け垣に咲くツツジのピンクや白の色合い、梅雨を前にした紫陽花の開花状況など、この季節ならではの花々が見せる表情を楽しむことができます。

 桜の花の季節のあと、木々には若葉が多く茂り、緑の陰が深まって来ました。目立たない小さな花が、広がる緑を背景に人目をひく存在になっています。春から夏に移行するこのシーズン、梅雨が明けて、真夏がやって来る日本特有の季節の移り変わりを毎年私たちは体験してきました。今年もその季節の変化の始まりに気づかされると、大げさに言えば、これまで通りに生活できる世界に住んでいるという安心感も生まれるのでしょうか、ほっとすることもあります。

 我が家の玄関前に植えられているカラーの花が今年も咲きそろいました。黄色い小指のような穂が真っ白いハート型の花びらに包まれて、あたかも空を指差している様に茎を直立させていました。しばらくの間は、何本も林立して天を仰ぐカラーの姿を目にすると立ち止まって眺めていました。白いハート型の花びらと書きましたが、カラーの花びらは変化した葉から生じたものだと知ると、特徴ある姿を見せるこの植物が元来は南アフリカ原産と言われるのも頷けます。日本の気候風土に順応したこの植物が、今では初夏を示す花を咲かせる存在となったことを想像し、植物の大地に根ざす生命力のたくましさを感じます。

 地上の植物たちが季節に対応して変化していることは事実ですが、植物の季節変化の原因は太陽が地表にもたらす陽射しが一年を通じて周期的に変化するからです。そのことに気づいた人類は一年を通じて太陽の運行を天と地で世代を超えて詳しく観察しました。太陽が真東から昇り真西に沈む春分と秋分の日の発見、そして季節の変化を捉える上で重要な夏至や冬至の日の発見を重ね、やがて古代の人々は天空の中を移動する太陽が星占いの星座の中を移動することを知りました。星占いの12星座は、古代の人々が太陽の運行を知る天のカレンダーとして使われた、季節の変化をいち早く知る重要な星座だったのです。

大小島さんプラネ 天と地で季節の変化を意識してきた、そんな人間の歴史の中での営みも思い出しながら、先日、多摩六都科学館のプラネタリウム、サイエンス・エッグで現在投影されている番組「全天88星座」を楽しみました。番組をご覧になると分かりますが、地元出身の大小島 真木さんが地上で見る水と緑と子どもたちを星々の世界に配置して描いた星座絵は、天と地を結ぶ人間の想像力の素晴らしさを印象的に伝えています。

 真夏を前にして、これから私たちは梅雨の季節を迎えます。晴れた夜空が望めなくなると、それだけ織姫星と彦星が挟む天の川が話題となる夏の夜空が待ち遠しくなります。そんな時、多摩六都科学館のプラネタリウムで星座の世界の成り立ちと魅力に触れていただければ、皆さんが今年の夏に出会う夜空はさらに素晴らしい世界になるに違いありません。



今年の花見を振り返る

2017.04.21 15:32:55
テーマ:館長コラム 

 桜我が家の近くを流れる神田川沿いの道も、咲き誇っていた桜の木々が、たびたび風に吹かれて花びらを水面に落とし、すっかり葉桜を数える散歩道になりました。多くの皆さんも、最近では、花見に出かけた思い出を振り返ることが多くなったと思います。

 皆さんは、どんな花見をされましたか? 今年は、いち早く開花宣言が出されたにもかかわらず、仲間と花見に出かけようという日は、しばらくやってこなかった記憶が残っています。

 開花宣言後、確かにあちこちで桜の花と出会う機会も増えました。しかし、桜の木々が連なり、例年なら花見の舞台となっている場所も、早咲きの枝垂れ桜を挟んで多くの桜が咲き揃うまでになかなか至らず、今年の桜は一斉開花とは行かない不安まで感じたこともありました。

 花見の舞台の多くは一斉開花の桜を見に行くべき場所です。一斉開花がなかなか期待できない今年は、色々な咲き方をした桜を楽しめる場所を探して歩くことにしました。そこで、前回のコラムでも触れましたが、近年連れ立って花見に行く小学校時代の同級生と、まずは4月5日に上野公園に出かけました。

 上野公園と言うと、毎年、テレビのニュースなどで紹介されるように、花見の人々が集う沿道の桜並木が有名です。しかし、一斉開花の花見を避けた今年は、あえてそこには行かず、上野公園でも沿道の突き当たりにある東京国立博物館の庭園に出かけました。この庭園は東京国立博物館本館の丁度真裏に位置し、昔は寛永寺の内庭と言われている、中心に大きな池が占める周りの森林の間を巡る遊歩道で散策を楽しめる場所です。この散策の道筋に沿ってあちこちに桜の木が花を綻ばせているのが印象的でした。

 庭園散策中、多様な木々の緑が織りなす林間で、緑陰とも言える背景に包まれて咲き誇る桜の姿は、色が一段と映えて、背後に抜けた空に浮かぶ白い雲との対比も楽しむことが出来ました。この日は、その後、近くに寺が集う根津から千駄木に至る谷中の街歩きもしました。そこで発見したのは、墓地が連なる灰色世界の寺町にも、あちこちに目立つ枝垂れ桜の大木が、桜の季節を特徴づけていることでした。

 森林や寺院の中で眺めた今年の花見ですが、4月19日、今年の花見の締めくくりとして、高尾山の麓にある多摩森林科学園に出かけました。ここは広大なサクラの保存林があることで有名です。保存林には総数1400本の日本全国各地から集められたサクラが植えられていて、種類によって開花時が異なることでまだまだ咲き誇る桜の木々と出会う事ができました。

 ここでも、谷を挟んだ森林の中に咲く桜の花は、全体として山を包む多様な緑の世界の中に浮かぶ桜の花びらの連なりを見せていて、今年の花見で目論んだ、風景の中での桜の花見を楽しむことができました。

 日本人は昔から、春になると何時も、出会う桜の花を愛でてきました。おそらく生きている限り、日本では誰もが春の桜との出会いを楽しむのだと思います。出会う花も、それを見る人も、時の流れに従って変化を続けていることを考えると、どの花見も、花にとっても見る人にとっても生きている間に一度しかない出会いです。今年の花見も、人生の貴重なひと時の思い出になるかもしれません。皆さんの今年の花見は如何でしたか?




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