今回、そこで、白と黄緑も混じったサクラの花びらが黒い枝を包む姿を発見しました。サクラの花でお馴染みのピンク色は目立たず、それだけ印象深く見えるこの桜は、毎年ソメイヨシノよりも早く開花するので調べたこともあり、大島桜かなと思っています。
帰宅して、東京でのソメイヨシノの標本木の判定から、この日に東京でのサクラの開花が宣言されたことをテレビのニュースで知りました。
昔から、春を迎えると、サクラの花の開花を知り、満開まで、更には散り果てて見えなくなるまで、サクラの花が辿る多彩な変化は、日本に住む人々にとって数々の花見の思い出を提供してきました。
個人的にも小学生になって、遠足で富山の呉羽山の麓でみたサクラ、中学時代に過ごした和歌山の紀三井寺で家族と過ごした花見、今は亡き父と吉野山で眺めた山桜の世界など、そして、最近では、多摩六都科学館の館長になってから、館庭に植えられた毛利宇宙飛行と共に宇宙を旅したサクラの種の子孫とされる宇宙桜との毎年の出会いなど、これまでの人生で体験してきた数々の花見の思い出を振り返ると、走馬灯の景色を見る様にいくつもが蘇ってきます。
満開の華やかさと散り行くはかなさが、私たちとサクラの花の出会いが何時も一期一会であることをはっきりと示してくれるサクラの花見は、誰にとっても人生で忘れられない時に含まれるのかもしれません。
有名な歌人・在原業平が桜の花と人の心の関わりを読んだ「古今和歌集」の歌があります。
世の中に たえて桜のなかりせば、春の心はのどけからまし
この歌は、サクラの開花は何時だろうか? 満開はいつ頃なのか?
今回は誰と何処で何時花見をしようか?・・と、春が近づき、気になる桜の開化から花の散りゆくまで、私たちが、サクラが示す時の成り行きを気にしながら過ごす人間の心の動きを見事に捉えた歌として良く知られています。
サクラの花の開花から、満開、そして散り行く姿は、生き物にとって時の流れがもたらす避けられない変化を強く印象付けます。花の華やかさは、はかなさに通じる一方通行だけに、散り行く姿は、とてもいとおしく感じます。川沿いに続くサクラ並木を友人と共に花見をしたとき、満開も過ぎていたせいか、サクラの花ビラが風に吹かれて散っている姿に接したことがあります。これは花見で出会った花嵐(はなあらし)の思い出になっていますが、その際、水面に漂うサクラの花ビラを花筏(はないかだ)とも言うことを思い出しました。どのサクラの花も最後まで素敵に表現されています。
生きている私たちにとって時間には限りがある、やりたいことしたいなら時を有意義につかいなさい。今年も花見で、サクラの花が示す、華やかさを残して消えて行くはかなさ、いとおしさを眺め、生きものにとっての時の営みがもたらす時の重みにも気づければと願っています。同時に、皆さまにとって、この春も素敵な花見が出来ることを祈念しています。
多摩六都科学館の宇宙桜は館庭のソメイヨシノが散り始めるころようやく開花し始めます
高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)1939 年4月、富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年、東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科 学系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフプロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。
2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)











