今年の夏を迎えての気温上昇は日本だけではありません。ヨーロッパでも6月下旬には記録的な猛暑が発生し、多くの国で最高気温が40℃を越えたことが報告されました。6月21日から28日にかけて、ヨーロッパでは長期間にわたり広範囲で顕著な高温が続き、平均気温は平年より約10℃も高くなりました。デンマーク、ポーランド、ドイツ、チェコ、ベラルーシ、ハンガリーでは各国の最高気温記録を更新し、イギリス、オランダ、ルクセンブルク、スイス、オーストリアでも6月としての最高気温を更新しました。特にスペインのアンドゥハルでは45.1℃、フランスのピソスでは44.3℃を記録しています。
私はロンドンで2年ほど過ごした時、エアコンの無い住居に住んでいましたが、日本の夏に比べて暑くは無かったヨーロッパにまで、地球温暖化による気候変動の影響が明確に出ていることには驚かされます。研究者によると、気候変動の影響でヨーロッパの猛暑は今後さらに顕著になると予測されており、熱波の頻度や強度は増加傾向にあります。195の国と地域で猛暑日が倍増しており、短期的にこの傾向が逆転する兆しは見られません 。このように、今年のヨーロッパの高温は歴史的規模であり、気象学的にも社会的にも大きな影響を及ぼしています。
日本では、これまで2025年夏の平均気温が1898年以降で最も高く、日最高気温41.8℃を記録した地点もあり、猛暑日や40℃以上の地点数は歴代最多となりました 。このような高温は、地球温暖化がなければほぼ発生し得ないと推定されています 。
近年の世界的な気候変動は、人為的な温室効果ガス排出が主因であることがIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書で明確に示されています。大気中のCO2濃度は2015年に400ppmを超え、2022年には417.9ppmに達しており、これは人類が経験したことのない水準です 。2011~2020年の世界平均気温は産業革命期に比べて1.09℃上昇しており、極端気象や海面水温の上昇も観測されています 。
地球温暖化に大きく影響する温室効果ガスの排出を減らす試みも国際的に実施されていることは皆さんもご存じでしょう。日本の2022年度の温室効果ガス排出量は約10億8,500万トン(CO2換算)で、2013年度比22.9%減少し、過去最低値を記録しました 。これは暖冬や鉄鋼生産量の減少なども影響していますが、2050年ネットゼロに向けた減少傾向は継続中です 。政府は「GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)」に基づき、脱炭素と経済成長の両立を目指す施策を加速させています 。
世界全体では、2030年までに2019年比で温室効果ガスを43%削減、2035年までに60%削減、2050年までに温室効果ガスの排出量を完全にゼロにするのではなく、排出を可能な限り削減したうえで、残った排出分を森林や技術的手段で吸収・除去し、正味でゼロにする、いわゆるネットゼロを目指す目標が設定されています 。また、途上国向けの気候資金も2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大する計画が進められています 。
気候変動の進行に伴い、再生可能エネルギーの導入コストや地域偏在、電力需要増加による不確実性などの課題が存在します 。さらに、熱・原燃料の脱炭素化技術の確立も不可欠であり、国内外での政策・技術の両面からの対応が求められています 。総じて、地球規模・日本国内ともに温暖化は進行中で、異常気象や高温記録が増加しており、温室効果ガス削減と脱炭素技術の推進が急務となっています。
8月を迎え、毎日朝の気象情報では、猛暑から酷暑へと地域毎の最高気温予想が示され、その際、命に係わる熱中症への警告も目立つ日々が続いています。連日、熱中症で倒れ緊急搬送される人々の数も増え続けています。熱中症を避けるためにも、水分補給に勤め、室内でのエアコンによる気温と湿度の管理を意識する重要性が、気象情報だけでなくニュースの時間にも強調されています。夏休みに入って、家族で涼しい環境も楽しめる多摩六都科学館へいらっしゃる方々にも出会います。
猛暑と酷暑に見舞われた今年の夏を、皆さんが無事に過ごされ秋を迎えられることを願って今回のコラムを終わりたいと思います。
髙柳雄一(たかやなぎ ゆういち)1939 年4月、富山県生まれ。
1964年、東京大学理学部物理学科卒業。
1966年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科学系教育番組のディレクターを務める。
1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフプロデューサーなどを歴任し1994年からNHK解説委員。高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)。












