衣替えを、手元の国語辞書で調べてみると、「時候の変わり目に、季節に合った衣服に着替えること。昔は、陰暦四月一日と十月一日に行うしきたりがあった。現在では制服などについて、ふつう六月一日と十月一日におこなう。」と記載されていました。
昔の人々にとっては、現在のように、高度で広範囲の、場合によっては地球規模での気象観測にまで基づく天気予報で、地域ごとの天気の変化を先取りし、生活環境への影響まで知らせる多様な情報が得られず、衣替えが公共の場で暦に合わせて社会的に一斉に行われていたことが分かります。
猛暑の夏を前に衣替えを意識する季節を迎えて、現代の私たちが接する、多様な情報世界の一面を知ると、その背後には観測情報を収集する情報網、情報を処理して伝達し、情報を交換してより高度な情報を生み出す、地球規模で張り巡らされた多様な情報網の世界があることにも気づかされます。私たちは現代の科学技術が形成した情報の網、情報のネット・ワーク社会に住んでいるのです。その意味では、熱中症対策も必要な猛暑の夏の到来を知り、対策を考える衣替えの季節に、現代社会の情報網が多彩に機能していることには感謝したくもなります。
情報網を駆使するネット社会の深まりですが、今年の衣替えでもう一つ気づかされた話題があります。現在、地球温暖化と共に資源の枯渇への対策は、地球文明の維持を保つために避けられない課題の一つになっています。資源の枯渇への対策として、最近具体的に試みられているのは資源の再利用です。多摩六都科学館でも、そういった視点から、使用済漁網(ぎょもう=fish net)を生地の一部に再利用したポロシャツを、この夏からスタッフが着用することに決めました。これは、東久留米市に本社がある「GLOBERIDE」社の取り組みで、教室の開催などに協力いただいていることから実現しました。
漁網というネットが再利用された科学館スタッフのポロシャツの取り組みと、現在のネット・ワーク社会の多様なネットの深まりをご来館の皆様にもお気づきいただければと期待しています。
猛暑の夏を凌ぐ、漁網再利用のネイヴィー・ブルー色をしたポロシャツを着たスタッフが、夏の多摩六都科学館でお持ちしています。


1939 年4月、富山県生まれ。
1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科学系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフプロデューサーなどを歴任し1994年からNHK解説委員。高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)。
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■多摩六都科学館 ロクトリポート「新制服&新ロゴマークで新たな一歩を踏み出します」
https://www.tamarokuto.or.jp/blog/rokuto-report/2024/11/13/post-31252/
■GLOBERIDE(グローブライド)「漁網リサイクル素材のスタッフユニフォームで協力」
https://www.globeride.co.jp/newsfeedlist/20241115
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