髙柳雄一館長のコラム

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月並(つきなみ)とは言えぬ月にも出会える五月

晴れた日には、多摩六都科学館の前庭で、真鯉や緋鯉、さらには子どもの鯉のぼりまで加わって、風に沿って軽やかに泳ぐ姿が見られる季節になりました。地上ではサクラの季節は終わりましたが、ハナミズキやツツジの花などが、若葉も交えた新緑を背景に多彩な花の季節の到来を主張しています。五月になりました。

この春、サクラの開花は例年よりも全国的に早まり、最近では季節外れの温かい日も続いて、今年の夏は、最高気温25度以上の夏日、30度以上の真夏日、35度以上の猛暑日に加えて40度以上の酷暑日まで、気象庁で予報に採用されることになりました。それだけに、春から初夏へと、5月のゴールデンウィークを迎え、猛暑の夏の到来以前に、戸外での活動を有意義に過ごしたいと予定を立てていらっしゃる方も多いことでしょう。

私たちにとって、ゴールデンウィークの存在を最も明確に示しているのは五月のカレンダーかもしれません。月毎の曜日に合わせて、その下に日付を表示したカレンダーでは、一般に土日の日付を示す色は、土日以外の曜日の日付とは異なり、土日の存在を目立たせています。それと合わせて、国民の祝日は日曜日の日付と同じ色にして存在を強調していることも分かります。皆さんも、お手元のカレンダーでそんな関係を確かめてみてください。

今年のカレンダーでも、5月3日(日)の「憲法記念日」から、4日(月)の「みどりの日」、5日(火)の「こどもの日」、6日(水)の「振替休日」と、五月を特徴づける祝祭日の長い連なりを示す日付が日曜の日付と同じ色で示され、ゴールデンウィークの存在が目立っていることにもお気付きになると思います。祝日の4連休が目立つ五月は、一年の中でも月並みの月ではないことが理解できます。

一年でめぐる季節を時の営みとして把握して過ごすために私たちが利用しているカレンダーは、月毎に曜日でめぐる日付で表示されています。この月毎の日付のめぐりは、月の満ち欠けを基に人類が生み出した暦から誕生したことについては、このコラムで何度もお話ししました。大型連休の存在で月並とは言えぬ五月に触れてきましたが、今年の五月は、月の満ち欠けの上でも、月並みとは言えぬ月に出会えることを紹介してみたいと思います。

月並みとは、目新しい特徴がなく、平凡でありふれた様子を指した言葉です。明治時代の俳人・正岡子規が、毎月の句会で詠まれる陳腐な俳句(月並俳句)を批判したことに由来したとも言われ、そんな語源を知ると、月並みの月は空で見る月ではなく、暦で登場している月であることが分かります。空に見る月は新月から満月まで満ち欠けを繰り返し、日々、同じ姿を見せてはくれません。月の姿は平凡でありふれていると単純には言えない気もします。

今年の五月に出会う、月の満ち欠けで月並みなとは言えぬ月は、晴れていれば、毎月出会うお馴染みの満月です。「月見る月はこの月の月」とも言われるように、中秋の名月は満月でも月並みとは言えない月であることはご存知でしょう。これに対して、今年五月に出会う満月を月並みとは言えぬ理由は、夜空の舞台で、満月を見せてくれる太陽と地球と月が、宇宙で稀にしか起こらない天文学的な配置をしているからです。

国立天文台「ほしぞら情報2026年5月」に、それを紹介した興味深い図が出ています。

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地球を回る月の軌道を基にした、この図のさらに詳しい天文学的説明を知りたい方は、こちらをご覧になってください。ここでは、この図で、今年各月に見える満月を、地球からの距離で比べると5月31日が最も遠くに位置し、12月24日が最も近くに位置していることに注目すると、5月31日の満月は地球から最遠に見える満月になっていることが分かります。この満月はその意味でも月並とは言えませんね。

五月の満月に関して、もう一つ興味深いことが分かります。この図を良くご覧ください。最遠の満月の左側に位置する黄色い丸で描いた満月の日付を見ると5月2日になっています。五月の満月は2日と31日、晴れていれば、月に二回も満月を見ることが出来るのです。月に二度目に見える満月は、珍しさを配慮してブルームーンと言われています。この満月が、地球から最も遠くに位置して見せる大きさまで考えると、同時にマイクロムーンとも言えることに気づきます。月並みとは言えぬ今年の五月の満月に興味は尽きません。

酷暑日まで配慮する必要も出て来た猛暑の夏を前に、比較的過ごしやすい大型連休も含まれる五月は、戸外での活動を楽しむ貴重な季節として使いたいものです。今回は、梅雨の到来もありますが、夜空にも話題を広げてみました。満月の話題を取り上げてみたのは、見える世界の背後に知る科学の面白さにも気づいて頂ければと願ったからです。五月を迎え、素敵なゴールデンウィークをお過ごしください。

2025年3月14日の月   写真 長島健二(ボランティア会)



 


 

髙柳雄一(たかやなぎ ゆういち)

1939 年4月、富山県生まれ。

1964年、東京大学理学部物理学科卒業。
1966年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科学系教育番組のディレクターを務める。

1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフプロデューサーなどを歴任し1994年からNHK解説委員。高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)。