髙柳雄一館長のコラム

地域から世界を観る・世界から地域を観る~グローバル時代の感染症~

現在、私たち人類が信じている宇宙観は、天に対する大地を意識した地理的世界の観察から始まり、人間の観察する世界が広まるにつれ、天動説、地動説、天の川銀河へと宇宙を見る視点の変遷を経て生まれてきました。

世界を知りたいという好奇心は、科学という人間の営みとして発展し、現在では自然界に存在する物質、生命、宇宙は密接に関係して誕生してきたことを私たちは理解しています。現代の科学技術の智とも言える文化遺産を人類は手に入れたのです。

地域から世界を観ることで、世界から地域を見る視点を手に入れて来た科学の発展の事例はいくつもあります。感染症の克服の歴史もその一つです。その時代時代のグローバル化の中で感染症が世界的流行(パンデミック)となっても、世界の英知がそれを克服して来たのです。人間の文化の中でそうした科学が果たす役割を地域の人々とともに知り、考える、そんな機会を生み出すことを多摩六都科学館は願ってきました。今、科学は全力でワクチンと特効薬の開発に取り組んでいます。地域から世界を観る科学の視点と科学が発見した世界から地域を観る視点を交えることで、『新しい生活様式』での科学技術のあり方を皆さんと考える重大な機会が今だと信じています。




高柳 雄一(たかやなぎ ゆういち)

1939 年4月、富山県生まれ。1964年、東京大学理学部物理学科卒業。1966年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、日本放送協会(NHK)にて科 学系教育番組のディレクターを務める。1980年から2年間、英国放送協会(BBC)へ出向。その後、NHKスペシャル番組部チーフプロデューサーなどを 歴任し、1994年からNHK解説委員。
高エネルギー加速器研究機構教授(2001年~)、電気通信大学教授(2003年~)を経て、2004年4月、多摩六都科学館館長に就任。 2008年4月、平成20年度文部科学大臣表彰(科学技術賞理解増進部門)