ロクトリポート

2/23(日)開催 「電波とコンピュータで探る金星大気の世界」講演会の様子をお届け

今回の講演会は

「ロクトサイエンスレクチャー 宇宙の最新研究に触れよう」 第2弾!

多摩六都科学館では、公益財団法人 宇宙科学振興会が主催をする『宇宙科学奨励賞』を受賞された研究者をお招きして、毎年ご講演いただいています。

『宇宙科学奨励賞』とは
宇宙科学分野で優れた研究を行っている若手研究者を顕彰する目的で、宇宙理学と宇宙工学の2つの分野から毎年1名ずつ選出されます。

なお、昨年までの「宇宙科学奨励賞受賞記念講演会」からタイトルと実施方式を大きく変え、参加者の皆さんに、講師の先生とより近い距離で積極的に参加してもらえるような講演会を目指しました。

講師は、昨年度に宇宙理学分野で受賞された、
京都産業大学 理学部 宇宙物理・気象学科 准教授 安藤 紘基(あんどう ひろき)先生です。

 ▲安藤紘基先生(左)、髙柳館長(右)

▲講演会の様子

講演タイトルは

「電波とコンピュータで探る金星大気の世界」

金星といえば、地球と同じように太陽の周りを回っている惑星のひとつ。更に、地球と大きさや公転周期が近いことから「地球の双子星」とも呼ばれます。
ですが、安藤先生が研究をされている「金星の大気」の視点から見ると、2つの惑星は全然違うということを最初にお話しいただきました。

<金星の大気>

気温と気圧 : 約460℃・約90気圧
→高温高圧により、水は水蒸気としてのみ存在

主成分   : 二酸化炭素 (CO₂)、濃硫酸の分厚い雲(厚さ20kmほど)が全球的に広がる

対流速度と自転速度:
大気は4日で1周・星の自転は240日で1周(地球では大気も自転も1日で1周)
→金星では大気が自転速度の60倍の速さで運動する(スーパーローテーション)

さらに、気象学の視点で見ると、金星には、地球や火星で発生している「偏西風」などの蛇行する大気運動が無いという点が太陽系の地球型(岩石)惑星の中で独特なのだそうです。
ただ、系外惑星(太陽系外の惑星)の観測によると、地球や火星の方がイレギュラーなのかもしれないようで、これには会場でも驚きの声が上がりました。

このように、「双子星」でありながら地球と対極のような存在である金星を知ることはとても重要なので、今後世界的な“金星探査ブーム”が来るとか来ないとか。

安藤先生は、そんな金星の大気を「電波掩蔽観測」という手法で研究されています。

電波掩蔽観測とは
金星を周回する探査機から放出した電波を地球上で受信して、電波が“金星大気を掠める場合”と“まっすぐ地球に届く場合”の波の様々な変化から通過した大気の様子がわかるという観測手法。欧州宇宙機関 (ESA) の探査機「Venus Express」(2014運用終了) や、2016年から活躍中の日本の探査機「あかつき」により行われています。

なんと、受信する電波の[周波数の変化]から「高度による気温・気圧の分布」、[受信した電波の強度]から「高度による硫酸蒸気混合比の分布」というように様々なことがわかるのだとか。

さらに、観測によって捉えた現象や構造を、惑星大気の数値モデル(コンピュータによる大気シミュレーションモデル)「AFES-Venus」で再現できたことから、安藤先生は現在「電波掩蔽観測」と「数値モデル」による観測と理論の両面から研究を行っておられます。

また今回、安藤先生には学生時代のお話もしてくださいました。

<学生の皆さん向けに先生の教訓を3つ紹介!>

何でも良いので、自分が得意と思えるものや夢中になれることを見つける。

大学受験前にはオープンキャンパスなどで事前に情報収集をして「やりたいこと」と「学ぶ内容」のギャップを減らす(大学院に行く場合は受験前に必ず研究室訪問する)

最後は「努力」と「運」!(先生ご自身が人に恵まれたことから)周囲への感謝と謙虚さを忘れないように心掛けたい。

講演会の後半では、参加者からのスマートフォンを通じて集めた質問や口頭での質問にお答えいただきながら、髙柳館長とともにお話を深掘りしました。

大変多くの質問を寄せていただき、時間いっぱいまでご回答いただきました。

▲安藤先生と髙柳館長の対談(質疑応答からの深掘り)の様子

安藤先生のご厚意で公演中に回答しきれなかった質問にもご回答いただきましたので、当日お答えいただいた質問も含めてQ&Aを公開させていただきます。

また、当日の簡易版の資料もご用意いただきましたので、内容を振り返りたい方、気になった方はQ&Aと合わせてご覧ください。(閲覧期限5月31日)

※複製や他者への提供などは禁止とさせていただきます、ご了承ください。

2/23(日)開催 「電波とコンピュータで探る金星大気の世界」Q&Aを大公開!

講演会スライド資料pdf

改めまして、ご講演いただいた安藤先生、共催としてご協力いただいております宇宙科学振興会の皆さまへ厚く御礼申し上げます。

ご参加いただいた皆さまもありがとうございました。是非またご参加ください。