ロクトリポート

3.11 星空とともに

今日で東日本大震災から9年が経ちました。当館では、2016年から毎年3月11日に近い日曜日にプラネタリウム番組「星空とともに」の投影を続けてきました。「星空とともに」は仙台市天文台が、震災の象徴にもなっていた星空を被災者の手記とともに残し、伝えていく取り組みとして制作された番組です。今年は3月8日に投影を予定していましたが、新型コロナウイルスの感染予防および拡散防止等のため投影中止となりました。

そこで多摩六都科学館のプラネタリウムで2011年3月11日の星空を再現しました。時刻は20:00頃です。中央が南、左が東側、右が西側になります(星空を広く見るため少し歪んでいて、実際の空と見え方が変わります)。

まず目を引くのは西方にある月。半分より欠けた姿で「すばる」のすぐ近くで輝いています。

月から少し南寄りに視線を向けると、斜めに並んだ3つの星とそれを囲むように並んだ4つの星。冬を代表するオリオン座です。

オリオン座の3つの星は三ツ星とも呼ばれ、その三ツ星を東向きに辿って視線を少し低いところに向けると、おおいぬ座の「シリウス」が見つかります。シリウスから更に東寄り少し高いところで輝くのは、こいぬ座の「プロキオン」。この2つの1等星と合わせてほぼ正三角になるオリオン座の「ベテルギウス」を結べば「冬の大三角」です。

さて、冬の大三角の辺りには、白っぽくぼんやりとした冬の天の川も見えています。街明かりの明るい現代では、天の川を見ることは難しくなってしまいました。

「星空とともに」 の中では、震災の影響で街明かりのない夜空に見えた天の川や満天の星、いつもより多く数えられた流れ星についても語られています。

『あの星空は天国へ召された方々の道しるべとなったのではないでしょうか』

『流れ星は天国へ向かう魂なのだというエピソードが頭をよぎり、流れ星の多さに耐えられなくなり目を伏せてしまった』

『本当にきれいな星空だった』

悲しみ、苦しみ、恐怖、不安、焦り、怒り。日本各地で様々な感情や葛藤があった夜でした。

そのような状況の中、被災地の方々の頭上には満天の星がありました。

あなたは、あの日の夜をどのように過ごされましたか?

あれから9年目の夜、2020年3月11日の20:00頃の空を再現したのが下の写真です。

西の方に見える明るい星は「宵の明星」とも呼ばれる「金星」。月は反対の東方で満月に近い姿で見えるはずです(写真よりももっと低空にあるためここには写っていません)。惑星や月は姿も位置も変わり、9年前と全く同じ空にはなりません。

実際の空で見る星の数も違うかもしれません。流れ星もあんなにたくさんは数えられないかもしれません。天候が悪くて星が見えないかもしれません。星を眺めるどころではない、という方もいらっしゃるかもしれません。

それでも、星座や天の川の星々は恒星と呼ばれ、1年経つとほぼ同じ位置に戻ります。あの日と同じ星々は今夜も確かにみなさんの頭上にあります。

「星空とともに」を投影することはできませんでしたが、今夜少しでも晴れたのなら、星を眺めて、あの日を思い出していただければ幸いです。

※星を探したり撮影する時は、車の往来がある道路などではなく、ご自宅や広く安全な場所でお願いします。また、子どもの皆さんはお家の方と一緒に見るようにしましょう。