ロクトリポート

農と食の体験塾 大豆編2022 【初の対面講義】

2014年から行っている農と食の体験塾は、東大生態調和農学機構において、その分野に携わる先生方から対面で講義を受けるという貴重な機会を設けてきました。しかし、2020年のコロナ禍以降、オンライン講義に切り替えてきました。
そして、今回2年半ぶりに対面における講義、しかも東大生態調和農学機構に新設された研究棟で初めての講義が実現しました。

研究棟。カフェのような雰囲気です。

講義は、農と食の体験塾の実行委員にも加わっていただいている矢守航准教授による、東大生態調和農学機構の概要と、スマート農業についてです。

スマート農業とは、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して省力化・精密化や高品質生産の実現を推進している新たな農業のことです。たとえば、畑ごとの作物の成長の様子をドローンなどで上空からスキャンして情報収集・分析する方法や、温室で土を使わずに温度や光を機械制御した環境で野菜を生産する養液栽培などがありま。

スマート農業は、日本の農業の担い手不足などを解決してくれるかもしれません。また、世界・地球、はたまた宇宙規模の食料確保に関する課題の一助になるかもしれないということです。

このスマート農業を、東大生態調和農学機構でどのように研究しているか、研究における課題や可能性を教えていただきました。

オンサイト(対面)での先生の熱のこもった講義により、質疑もとても活発に行われました。また講義に対する理解度と満足度も高かったようです。講義後の受講生の感想を一部、紹介します。

・工場や宇宙空間で農作物を生産する話は魅力的だった。地球温暖化と人口の増加で食料不足が起こる時代まで私は生きてはいないが、孫、ひ孫のために期待の持てる内容でした。
・農業が趣味の部分と大規模食糧生産にわかれて、農村の過疎化が更に進みそうで心配です
・先生の対面講義がとても学びが深く、植物工場での栽培については、自然と調和していないから違和感があるな、という先入観でしか見ていなかった自分に対して、視野が広がり食料問題の未来を見据えてのひとつの可能性、課題解決のためにもアリなのかもしれない、という気づきをいただきました。
・最近では近所のスーパーマーケットで水耕栽培のレタスを普通に目にするようになり、より身近になりました。水耕栽培のレタスは値段が高いと感じていましたが、土耕野菜の価格との差異の変動の理由が本日の講義でよくわかりました。

農業、特にスマート農業というと自分の暮らしとはかけ離れたものと思われがちですが、講義を通じて自分たちの今と未来の暮らしに直結している、その研究の先端を自分たちの暮らす地域で行われているということを感じていただけたようです。

講義後、興奮冷めやらぬ中、次週の作業に関するレクチャーのために調製場に移動します。

大豆の栽培過程の最後として「風を使って、くずやゴミを吹き飛ばす風選(ふうせん)」と一時的に取り出された大豆を選り分ける「選粒(せんりゅう)」を次週に実施するので、そのための風選機と選粒のデモンストレーションをしていただきました。

風選機。電動で風を起こし、豆と大きなクズなどを分離させます。


選粒。今回は豆の選別を手で行う予定です。

とうとう来週12月6日は、生態調和農学機構で行う最後の実習を行います。