ロクトリポート

「巨大加速器LHCで探る宇宙」にまつわるエトセトラ

2012年7月4日に世界最大の加速器LHC(Large hadron collider)で行われていたATLAS実験で、未知の素粒子であるヒッグス粒子が発見され、話題になりました。ヒッグス粒子は、物質の質量の起源に関わると考えられていた未発見の粒子だったためです。この成果は、陽子と陽子の衝突の様子を検出器で入念に調べ上げて得られました。

ATLAS実験は世界中から研究者が集まり、巨大な検出器を用いた実験をしています。その研究者たちが2018年6月11日から15日にかけて東京に集まり、研究者集会が行われました。

その翌日、6月16日(土)に多摩六都科学館に研究者が来館し、市民向けの催しとして、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)と共催の講演会「巨大加速器LHCで探る宇宙— Phantom of the Universe —」を行いました。

最初にLHCの仕組みや実験の様子をフルCGで再現した大型映像「Phantom of the Universe」を見て、外川学さん(KEK 素粒子原子核研究所)と奥村恭幸さん(東大 素粒子物理国際研究センター)がその映像に沿って解説を行いました。

質疑応答では、素粒子、加速器や検出器、研究者の生活などに対しての参加者からの素朴な疑問から鋭い指摘まで、時間が許す限り答えました。

質問に答える奥村さん(左)と外川さん(右)

東京とLHCがあるジュネーブでは約7時間の時差があります。東京で講演会を土曜日の夕方に行えば、ジュネーブは土曜日午前中で生中継ができるのはないか、と提案があり、2019年10月19日に2回目の講演会「巨大加速器LHCで探る宇宙— Phantom of the Universe —」として実施しました。

花垣和則さん(KEK素粒子原子核研究所)と山崎祐司さん(神戸大)が「Phantom of the Universe」を見た後の解説と質疑応答を行い、LHCに滞在中の青木雅人さん(KEK)と田窪洋介さん(KEK)に、様々な場所を紹介してもらいました。

プラネタリウムドームとLHCに滞在中の研究者と中継をつなぎ、施設内を紹介してもらう様子

3回目は2020年5月16日(土)に開催予定でしたが、休館していたため開催できず、2021年3月6日(土)に延期することになりました。

さて、今年9月6日(日)にKEK一般公開2020をオンライン開催することになりました。

https://www2.kek.jp/openhouse/2020/

KEKのATLASグループの研究者は、講演やATLASなどからの中継を行います。

https://www2.kek.jp/openhouse/2020/atlas.html

興味がある方は、KEKの一般公開にぜひアクセスしてみてください。

次の多摩六都科学館とKEK共催の催しは、2020年9月27日(日)に実施予定の「素粒子をさがそう」です。小さな子供とその保護者向けに、素粒子というものがあるよ、ということを知ってもらうイベントです。

https://www.tamarokuto.or.jp/event/index.html?c=event&info=2398&day=2020-09-27

2014年6月に多摩六都科学館とKEKは、研究で得られた知見を広く市民に還元するために協力協定を結び、以降様々な催しを行ってきました。

https://www.kek.jp/ja/newsroom/2014/06/11/1630/

2019年までの催しと全く同じ通り、とはいきませんが、「新しい日常」の中でも、研究者から直接お話を聞いたり、疑問をなげかけたりする機会を多摩六都科学館とKEKで試行錯誤しながら設けていきますので、情報発信に耳を傾けていただければ幸いです。