ロクトリポート

北の空の星の動き(2)北極星のリレー

【北の空の星の動き(1)】では、「いつでも動かず北を示している星」として、北極星を紹介しました。

ところが、何千年、何万年といった長~いスパンでみてみると…
なんと、星そのものが「選手交代」してしまうのです!今回はこのことについてご紹介します。

前回は「北極星が動かないように見えるのは、回転の中心だから」という内容でしたが、この中心位置を「天の北極」と呼びます。【北の空の星の動き(1)】で紹介したように、地球の自転軸(地軸)を北にず~っと伸ばした先で、北極星もここに位置しています。

ところで、地球の自転はよく「少し傾いて回っているコマの軸」に例えられます。
軸が円を描いて回るコマのように、地球も長い時間をかけて首振り運動をしているのです。この運動のことを「歳差(さいさ)」運動といいます。

この歳差運動により、地軸の先にある「天の北極」も少しずつ位置が変わります。そして「その時々の天の北極」の位置を点としてつなぐと円になるのです。
その円を、地上から見た5月初めの21時ごろの星図に加えると下図のようになります。


1周が約26000年という、とてつもなく長い時間をかけた運動による円で、線の目盛りは1000年ごとです。

この図の中心付近にあるAD2000の目盛り近くが、現在の天の北極になりますね。
そして、現代のわたしたちが「北極星」と呼んでいるのは、こぐま座のポラリスになります。

さてここで、「あれ?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
そう、ポラリスはこの円上にはありません。つまり、天の北極にぴったり位置してはいないのです。

ですから本当のことを言うと、北極星も回転の中心ではなく、毎晩ほんのすこ~しだけ、小さく円を描いて動いているのです。
でも、よほど気合を入れて観察しないとわからない程度。迷子になって北も南もわからない、という時にはちゃんと役に立ちますのでご安心ください。

そんなわけで、北極星は「天の北極の近くの明るい星」ということになります。
それぞれの時代で、この円に近くて見つけやすい星が北極星となり、まるでバトンリレーのように、役割が引き継がれていきます。

例えば2000年後(AD4000ごろ)には、ロケットのような形に結ばれているケフェウス座のてっぺんの星が、北極星になりそうですね。

今から約5000年前(BC3000年ごろ)には、りゅう座のトゥバンが北極星の役割を担う星でした。4等星でかなり暗い星ですが、きっと当時はどこからでもよく見えたのでしょう。
そのころ建てられたエジプトのピラミッドの一部には、この星に向けて造られたといわれるトンネルもあり、当時の人々にとって特別な星だったことがうかがえます。

また、今から12000年後(AD14000年ごろ)には、こと座のベガが北極星の最有力候補ですが、これはだいぶ円から離れていますね。昔の船乗りのように、航海の目印にするにはちょっと心もとないですが、明るい1等星でみつけやすいのはうれしいですね。

星図を片手に、移り変わる北極星と、それぞれの時代を想像してみるのも、楽しいかもしれません。

※星をさがす時は、ご自宅など安全なところでお願いします。また、子どもの皆さんはお家の方と一緒に見るようにしましょう 。