ロクトリポート

プラネタリウム「ノチウ」星座 vol.5 四つ星

イランカラプテ!

皆様いかがお過ごしでしょうか。
アイヌ民族の星座についての記事も5回目となりました。毎回、末尾に掲載している<おまけクイズ>ですがご参加いただけていますか? 前回は、
『Q5 「レラ」とは、いったい何のことでしょうか。私たちもよく知る、空を駆けるもの…がヒントです。』
さてこれは…?

それでは、臨時休館と、全編生解説プラネタリウム「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」の投影延期に伴い、アイヌ民族の星座をweb上でご紹介する企画のvol.5です(初回は>> プラネタリウム「ノチウ」紹介 vol.0 )。
ご覧くださり、イヤイライケレ !!!!!

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※アイヌ民族の星の話題は、この書籍からご紹介しています。
<出典> 末岡 外美夫(すえおか とみお)著
書籍 人間達のみた星座と伝承
『アイヌの星』/『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』
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※スマートフォンなどの画面では、星座の名前が正しく表示
されないことがあります。星座名を正確に表示するには
「PC用の表示に切り替える」などの機能をお試しください。
例:ラが小さく表示されればOK → レタ
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■春の大曲線
春の大曲線と呼ばれる目印をご存じでしょうか。北斗七星のひしゃくの形を見つけ、ひしゃくの持ち手をそのまま伸ばすようにたどると、他の星が見つけれられるという空の目印です。
>> 春の大曲線(多摩六都科学館 5月の星空案内)
ひしゃくの形を含む おおぐま座は国際天文学連合が定めた88の「星座」のひとつですが、ひしゃくの形そのものや春の大曲線、春の大三角などの目印は「星座」ではありません。こういった目印や、古くから親しまれている星並びは「アステリズム」と呼んだりします。とはいえ、国際天文学連合が定めた88星座以外にも古今東西たくさんの星座が作られたわけで、この連載でご紹介しているのもアイヌ民族の独自の星座、ということになります。

さて、春の大曲線で見つかるスピカのそばに、星が台形のかたちに結べるところがあります。次の写真で最も明るいのがスピカで、台形はその右側(西方向)に見えています。探してみましょう ↓

見つかりましたか?

ここは、からす座という星座です。ギリシャ神話によると、嘘をついた からすが罰を受け、空にはりつけにされているところ。四つの星は、からすを捕えている釘だといいます。ちょっと痛そうですね。

さて、この四つ星は、さほど明るくないものの見つけやすく、世界各地で星座が作られてきました。アイヌ民族にも星座が伝わっていますので、見てみましょう。

■四つ星
一つめ。
ヒント、ゆっくりと動き、体に渦巻きをもっているもの。なんでしょうか?

アネケポ(anekempo > ane・kem・po)【自身・を・なめる・小さいもの=蝸牛(かたつむり)】
左端(東側)の触角にあたる星は明るさの変わる変光星なのですが、この星が暗くなれば大雨や大雪が降ると占ったり、雨が降らなければこの星に雨ごいをしたりと、雨にまつわる伝承があります。かなり暗めの星ですが、気になる方は見えるかどうか挑戦してみましょう。

ちなみに北海道には、全身が黒いかたつむりがいます。また、殻に引きこもって身を守るのではなく、殻をふりまわして敵を追い払うかたつむりも発見されていますよ。インターネットでエゾマイマイと検索すると動画を見ることができます。

二つめ。
ヒント、四つの星の台形は、おおきな布。風を受けて進みます。

カヤノカ・ノチゥ(kayanokanociw > kaya・noka・nociw)【帆・の形の・星=帆掛け星】
これはアイヌ民族の船ではなく、日本の本州から漁や交易に訪れた人々の船です。

三つめ。
ヒント、レラがここから飛び出してきます。レラ…、クイズで「私たちもよく知る、空を駆けるもの」と出題していますね。大ヒント、目に見えない、びゅうびゅうと吹くものです。


レラ・チャロ(reracaro > rera・caro)【風・の吹出口】

レラとは…風のことでした! レラ・チャロは、ここから風が吹いてくるという星座です。なお、このレラ・チャロが見えだすのは春先。レラ・チャロが東の空に昇る春先は、ちょうど東の方角から東風が吹いてくる季節です。そして季節が巡ってレラ・チャロが西に見える頃には西風が吹くようになります。さらに、アイヌ民族の占星術師は星の輝き方で風や嵐を知ったともいいます。また、風の強い日に、レラ・チャロに向かって炉の灰をぶつけて「レラチャロ セケ【 風の口 ふさげ 】」と唱えると、翌朝に風がおさまるというおまじないもありました。

アイヌ民族は季節によって風の向きが変わることを知り、その目当てとなる星座を作っていたということが、この星座からわかります。日本でも東風(こち)は春の季語ですね。北海道、そして日本の風土ならではの星座を楽しめるのは私たちが“現地”にいるからこそ。ギリシャ神話の星座とも違う、アイヌ民族の星座の楽しさを、ぜひ今夜の空で感じていただけたらと思います。

・・・・・

ちなみに、レラとは風のことでしたが、クイズで「流れ星かな」と想像された方はいらっしゃるでしょうか。
流れ星はマッコィワ(matkoiwak > mat・ko・iwak)【妻・に向かって・帰る=妻訪(と)う】をはじめ、星が流れる、星が移る、星が落ちる、星がころぶ、星が帰る、星が走るなどという意味の呼び名が多く伝わっています。言い伝えでは、流れ星は不吉な前兆だとか、あまり見てはいけないとか、流れ星が消えないうちに足元から草や土をつかんで懐に入れると幸いが得られる、明るい流れ星が流れた翌日は猟がうまくいく、行先に星が流れるのを見たら出かけるのをやめよ、などなど、いろいろな伝承があります。

ちょうど、ゴールデンウィークは流れ星が見やすい時期。みずがめ座η(エータ)流星群の活動が最も活発になる(=流れ星がたくさん見られる)のがこの頃です。ハレー彗星の通り道を地球が通過することで、通り道の「ちり」が地球の大気とぶつかり、発光する様子が見られる…というしくみです。ピークは今日5月5日の深夜から5月6日の明け方までとみられ、今年は月あかりの影響がありそうですが、それでも流れ星を待つひとときはなかなか乙なもの。夜更かしをしても大丈夫な方は、ぜひご覧ください。もちろん安全には気を付けてくださいね。
>> 2020年5月6日 みずがめ座η流星群が極大(アストロアーツ記事)
>> 流星群(国立天文台)

それでは、前回のクイズの答え合わせです。

Q5 「レラ」とは、いったい何のことでしょうか。私たちもよく知る、空を駆けるもの…がヒントです。
<答> A5 風

<おまけクイズ>
Q6 色を表すことば、「フレ」。これはどんな色? 答えは次回!(火・金の14:00に連載予定です)

全編生解説プラネタリウム 「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」
開館が再開次第投影開始 ~ 531()まで

※臨時休館延長に伴い中止が決定いたしました。再投影は検討中です。(5/7

講演会「ことばから見るアイヌ文化と自然観
2020530() 17:1018:40
講 師:中川 裕(千葉大学 文学部教授)
4
11() 10:00より受付開始
※今後の社会情勢に応じて変更になる可能性があります。

※延期が決定いたしました。日程を調整中です。(4/17

※一旦中止とし、改めて実施を検討いたします。(5/19

<出典>
末岡外美夫(すえおかとみお), 1979. 『アイヌの星』
末岡外美夫(すえおかとみお), 2009. 『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』

<全編生解説プラネタリウム「ノチウ」web連載@ロクトリポート>(リンクはご自由に)
vol.0 番組紹介            「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」/アイヌ民族の星座
vol.1 星座 北斗七星①    ウシノカ・ノチウ/クットコノカ・ノチウ/北斗七星/恒星カムイ
vol.2 星座 金星            金星/疱瘡のカムィ/フレケタ/セレマック/ベテルギウス
vol.3 星座 北斗七星②    シアラサルカムィノカ・ノチゥ(尾の長い熊)/弓矢/舟
vol.4 星座 月と太陽       月/ア(月の知人)/三角星/鯨/イナゥ/ひしゃく
vol.5 星座 四つ星          かたつむり/船/レラ・チャロ(風の吹き出し口)
vol.6 星座 天体と季節    月の形/朝昼夜/季節
vol.7 星座 めぐる星       追われる娘たち/蛇/踊る娘たち
vol.8 星座 動物たち      狐/貂/ホケゥ・ノチゥ(狼)
vol.9 星座 さそり①      龍
vol.10 星座 さそり②    ザリガニ/カナカムィ(雷[龍]のカムィ)
vol.11 番外編              関連webサイト紹介
vol.12 星座 ねずみの倉  ねずみの倉/疱瘡のカムィ/日食
展示紹介                    アイヌ民族の着物を展示中!
※連載はvol.12で一旦終了ですが、今後も番外編を企画しています。