イランカラプテ!
皆様いかがお過ごしでしょうか。
臨時休館と、全編生解説プラネタリウム「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」の投影延期に伴い、アイヌ民族の星座をweb上でご紹介する企画のvol.1です(前回は>> プラネタリウム「ノチウ」紹介 vol.0 )。
ご覧くださり、イヤイライケレ!
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アイヌ民族の星の話題は、この書籍からご紹介しています。
<出典> 末岡 外美夫(すえおか とみお)著
『アイヌの星』/『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』
※星座名・星名表記は一部改めています。(アイヌ語指導 成田英敏氏)
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※スマートフォンなどの画面では、星座の名前が正しく表示
されないことがあります。星座名を正確に表示するには
「PC用の表示に切り替える」などの機能をお試しください。
例:ラが小さく表示されればOK → レタラ
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■北斗七星
プラネタリウムではおなじみの北斗七星。みなさん、見つけられますか? せっかくなので、お休み中の当館プラネタリウムの星空で、北斗七星探しをどうぞ ↓
北斗七星は…こちらでした ↓
見つけやすい北斗七星の星々。アイヌ民族にはこんな呼び名が伝わっています。
↑ ウㇷ゚シノカ・ノチウ( upsinoka・nociw )【 下向きに寝た[カムイ]の姿をしている・星 】
↑ クットコノカ・ノチウ( kuttokonoka・nociw )【 上向きに寝た[カムイ]の姿をしている・星 】
(※参考にした書籍では、【 上向きに寝た[カムィ]・の姿をしている・星 】との表記になっています)
いきなりふたつ登場しましたね。このふたつの違い、お気づきでしょうか。そう、北斗七星の向きが違います。ここで、北斗七星の空での見え方を確認してみましょう ↓
ステラナビゲータ11/株式会社アストロアーツ を使用して作成
北斗七星の形は同じですが、高さや向きなどが違うのがわかります。
もうお気づきですね。クットコノカ・ノチウとウㇷ゚シノカ・ノチウは、北斗七星の見え方の違いで、二通りの見立てを使い分けているんですね。変化する星空の様子を、アイヌ民族もよく知っていたことが感じられます。なお、北海道でも東京でも、見え方は同じように変化します。もし北斗七星を見つけたら、その向きにもどうぞご注目ください。
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ところでカムイとはなんでしょうか? まず発音ですが、カムイという、ムにアクセントをつける言い方になります。
一見(一聴? )すると日本語の「神」に近そうですが、動物や家屋や火など、いろいろなものに魂があるというアイヌ民族の考え方があり、それらがカムイとして敬われています。対して自分たち人間のことを表す言葉が「アイヌ」です。
そしてこのカムイという言葉は、昨年2019年に、ある天体の名称にも用いられることになりました。天文学者の組織である国際天文学連合(IAU)の創立100周年を記念して行われた「太陽系外惑星命名キャンペーン」において、日本の国立天文台のすばる望遠鏡と岡山天体物理観測所(当時)の188cm反射望遠鏡が2010年に発見した恒星「HD 145457」に、「カムイ」という公式名称が決定されました。
>> 太陽系外惑星系の名称決定、日本からの命名は「カムイ」、「ちゅら」(2019年12月17日)
>> 太陽系外惑星命名キャンペーン 命名する恒星・惑星について
この恒星カムイは春に見やすい星座である かんむり座の方向、410光年先にあり、見かけの明るさは6.57等…と肉眼では観察が厳しいものなのですが、いつかプラネタリウムで かんむり座を解説する機会が訪れましたら、恒星カムイの探し方もご紹介したいと思います。
それでは最後に前回のクイズの答え合わせです。
Q1 ノチウ、とはどんな意味でしょうか?
<答> A1 「星」
ノチウは星という意味でした! ただ、星を表す言葉は他にもあり、番組制作やこの記事のもとになっている書籍には「ノチゥ」「リコップ」「ケタ」「トムぺ」などが挙げられています。
本来であれば国会図書館などで複数の文献も比較参照すべきところですが、現在の状況下では厳しいため、本連載ではアイヌ民族の星の話題を集めた書籍である末岡 外美夫(すえおか とみお)さんの『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』を基に紹介してまいります。なお、末岡外美夫さんは著書で「アィヌ」「ノチゥ」と表記されていますが、「アィヌ」については現在「アイヌ」表記が一般的に使われていること、「ノチゥ」については画像や展示資料貸出などのご協力をいただいている公益財団法人 アイヌ民族文化財団のご助言、そしてアイヌ語指導の成田英敏氏のご助言のもと、当館では「アイヌ」「ノチウ」表記を使用いたします。
<おまけクイズ>
Q2 北斗七星は おおぐま座の一部分です。では、アイヌ民族には熊の星座はあるでしょうか? ないでしょうか! 答えは次回!(火・金の14:00に連載予定です)
全編生解説プラネタリウム 「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」
開館が再開次第投影開始 ~ 5月31日(日)まで
※臨時休館延長に伴い中止が決定いたしました。再投影は検討中です。(5/7) 終了
講演会「ことばから見るアイヌ文化と自然観」
終了2020年5月30日(土) 17:10~18:40
講 師:中川 裕(千葉大学 文学部教授)
4月11日(土) 10:00より受付開始
※今後の社会情勢に応じて変更になる可能性があります。
※延期が決定いたしました。日程を調整中です。(4/17)
※一旦中止とし、改めて実施を検討いたします。(5/19)
<出典>
末岡外美夫(すえおかとみお), 1979. 『アイヌの星』
末岡外美夫(すえおかとみお), 2009. 『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』
中川裕, 2019. 『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』 集英社
<全編生解説プラネタリウム「ノチウ」web連載@ロクトリポート>(リンクはご自由に)
vol.0 番組紹介 「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」/アイヌ民族の星座
vol.1 星座 北斗七星① ウㇷ゚シノカ・ノチウ/クットコノカ・ノチウ/北斗七星/恒星カムイ
vol.2 星座 金星 金星/疱瘡のカムイ/フレケタ/セレマックル/ベテルギウス
vol.3 星座 北斗七星② シアラサルシカムイノカ・ノチウ(尾の長い熊)/弓矢/舟
vol.4 星座 月と太陽 月/アムキリクル(月の知人)/三角星/鯨/イナウ/ひしゃく
vol.5 星座 四つ星 かたつむり/船/レラ・チャロ(風の吹き出し口)
vol.6 星座 天体と季節 月の形/朝昼夜/季節
vol.7 星座 めぐる星 追われる娘たち/蛇/踊る娘たち
vol.8 星座 動物たち 狐/貂/ホロケウ・ノチウ(狼)
vol.9 星座 さそり① 龍
vol.10 星座 さそり② ザリガニ/カンナカムイ(雷[龍]のカムイ)
vol.11 番外編 関連webサイト紹介
vol.12 星座 ねずみの倉 ねずみの倉/疱瘡のカムイ/日食
展示紹介 アイヌ民族の着物を展示中!
「ノチウ」投影開始! プラネタリウム「ノチウ」2021年4月に再登場
電子顕微鏡で・・・ 電子顕微鏡でクマの毛を見てみました!
ノチウ 講演会Q&A① 中川先生講演会Q&A アイヌ語/物語
ノチウ 講演会Q&A② 中川先生講演会Q&A カムイ
ノチウ 講演会Q&A③ 中川先生講演会Q&A 習慣/星/その他
1/19と2/16に再投影! [2022 冬]再投影/方位/四季の日出点と日没点
ノチウ秋投影&知里幸恵 10/9,10「ノチウ」再投影!& 知里幸恵の見た星空
ノチウ 投影レポート 2023年6月の投影内容/2030年6月1日金環日食
※連載は一旦終了ですが、今後も番外編を公開していきます。