ロクトリポート

プラネタリウム「ノチウ」星座 vol.3 北斗七星②

イランカラテ!

皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、前回ご紹介した金星はご覧になりましたか? 今、金星はとても明るく(>> 「宵の明星を見ましたか?」 )、しかも今日4月28日には金星と月が夕方の空で共演します。月は日々、見える位置や形が変化しますので、空の様子は一期一会。ぜひご覧になってくださいね。

それでは、臨時休館と、全編生解説プラネタリウム「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」の投影延期に伴い、アイヌ民族の星座をweb上でご紹介する企画のvol.3です(初回は>> プラネタリウム「ノチウ」紹介 vol.0 )。
ご覧くださり、イヤイライケレ!!!

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アイヌ民族の星の話題は、この書籍からご紹介しています。
<出典> 末岡 外美夫(すえおか とみお)著
『アイヌの星』/『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』
書籍 人間達のみた星座と伝承
※星座名・星名表記は一部改めています。(アイヌ語指導 成田英敏氏)
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※スマートフォンなどの画面では、星座の名前が正しく表示
されないことがあります。星座名を正確に表示するには
「PC用の表示に切り替える」などの機能をお試しください。
例:ラが小さく表示されればOK → レタ
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■いきものの星座
vol.1 でウシノカ・ノチウとクットコノカ・ノチウをご紹介した北斗七星。実は北斗七星付近に作られたアイヌ民族の星座はまだあります。見てみましょう。

シアラサルカムイノカ・ノチウ( siarasaruskamynokanociw < si・ara・sar・us・kamy・noka・nociw )【 本当に・(不明)・尾・が付いている[=尾の長い]・熊・の姿をした・星 】

当館のプラネタリウムで5月の空を再現すると、こうなります ↓

おおぐま座によく似たシアラサルカムイノカ・ノチウ。物語が伝わっています。

「昔々、シアラサルカムイ(尾の長い熊)という熊がいた。体は他の熊の6倍で、毛は固い赤褐色。長い尾を持ち、“悪魔の熊”と呼ばれ、恐れられていた。実はこの熊はもともとアイヌの娘であった。熊になってもやさしい心を持ち、迷子の子供を助けたり、男たちの狩りがうまくいくよう陰ながら手助けをすることもあったが、恐ろしい姿をしているために、村のアイヌ達にはただ恐れられているだけだった。
ある日。人々は、村の首長に熊の恐ろしさを訴えた。そこで首長は山に向かった。毒をたっぷり塗った矢を構え、シアラサルカムイを射ようとした。しかしシアラサルカムイは、何十年も前に姿を消した、その首長の妻だったのである。夫の姿を見て駆け寄ろうとしたシアラサルカムイと、射ようとした首長の様子を見ていた天のカムイは、哀れに思って彼女を天に上げ、星に変えた」

……切ないですねえ!!!!! そして、おおぐま座のギリシャ神話にもどこか似ているお話です(>> おおぐま座のお話 )。なお、このお話の狩人は、彼女の夫(首長)であるという伝承と、彼女の息子であるという伝承、さらにアイヌではなくカムイが熊になったという伝承があるのだそうです。ギリシャ神話との符合や伝承の地域差など、“同じこと”、“違うこと”、を調べると、言語学や民俗学など、いろいろな研究の手掛かりになりそうですね。図書館の開館が再開したら、ぜひ司書さんの力を借りて調べてみたいところです。さて続いては…

■道具の星座
これは何でしょうか?

そう、弓と矢ですね。投影期間中に展示を予定している、公益財団法人 アイヌ民族文化財団からお借りした展示品の写真です。矢の、獲物に刺さるところ(矢尻)には植物の根を煮詰めた毒をつけることもありました ↓

矢は、木、鹿の骨、羽、糸などで作られています ↓

それでは突然ですが、北斗七星を眺めながら弓と矢の星座を作ってみてください。どうぞ! ↓

いかがでしょうか? なかなか想像しやすいのではないでしょうか。

ク・ノチウ( kunociw < ku・nociw )【 弓・星 】
アイ・ノチウ( aynociw = ay・nociw )【 矢・星 】

プラネタリウムで見ればこんな感じ ↓

なお、狩りで狙った熊の毛皮は、こんな様子です(公益財団法人 アイヌ民族文化財団からお借りした展示品より) ↓

体が大きく、毛が固い熊であれば、うまく射られる確率が下がるということになります。弓矢の使い方や、語り継がれた狩りの知恵、そして獲物に向かう勇気など、物語ではなく生身の人間が生きる営みを思うと、弓矢の展示一点からもいろいろ想像が膨らみますね。

さらに、ここには舟の星座も作られました。想像できますか? ↓

舟の姿はこちら ↓

ノカ・ノチウ( cipnokanociw > cip・noka・nociw )【 舟・の形をした・星 】

船底の絶妙なカーブを見ると、まさに舟にぴったりです。この舟から引いた網に大きな魚がかかって、舟は魚のまわりをぐるぐる回っている、という伝承もあります。この魚とは…そう、北極星です。

ひしゃくの形でおなじみの北斗七星が、今夜は弓矢や舟にも見えるのではないかと思います。街の中でも探しやすい七つ星、ぜひ空でご覧になってくださいね。

それでは、前回のクイズの答え合わせです。

Q3 かに座のプレセぺ星団のあたりにはエルムン・プ【○○○・の倉】という星座があります。この○○○には生き物の名前が入ります。さあ、天に倉を立ててもらって住んでいるのはいったいどんな生き物でしょうか?

<答> A3 ねずみ
倉に住んでいるのは、ねずみでした。しかしなぜねずみが住んでいるのか…はいつかまたご紹介しましょう。

エルムン・プ( erumunpu = erumun・pu )【 ねずみ・の倉 】

なお、このエルムン・プ(ねずみ・の倉)は かに座付近にあたります。明るい星が少なく見つけづらい かに座ですが、4月30日には月がちょうどエルムン・プ/かに座に重なって輝きます。月が明るい分、星そのものは見えづらくなりますが、星座の位置を確かめたい方はぜひ眺めてみましょう。周囲の明るい星との位置関係を覚えてみるとよいでしょう。

<おまけクイズ>
Q4 「北斗七星」は、「北の空のひしゃくの形の七つ星」という意味の日本語の呼び名です。アイヌ民族はカムイや熊や弓矢や舟に見立てました。では、アイヌ民族は、ひしゃくの星座は作ったでしょうか? 作らなかったでしょうか? 答えは次回!(火・金の14:00に連載予定です)

全編生解説プラネタリウム 「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」
開館が再開次第投影開始 ~ 5月31日(日)まで

※臨時休館延長に伴い中止が決定いたしました。再投影は検討中です。(5/7)

講演会「ことばから見るアイヌ文化と自然観
2020年5月30日(土) 17:10~18:40
講 師:中川 裕(千葉大学 文学部教授)
4月11日(土) 10:00より受付開始
※今後の社会情勢に応じて変更になる可能性があります。

※延期が決定いたしました。日程を調整中です。(4/17)
※一旦中止とし、改めて実施を検討いたします。(5/19)

<出典>
末岡外美夫(すえおかとみお), 1979. 『アイヌの星』
末岡外美夫(すえおかとみお), 2009. 『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』

<全編生解説プラネタリウム「ノチウ」web連載@ロクトリポート>(リンクはご自由に)
vol.0 番組紹介            「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」/アイヌ民族の星座
vol.1 星座 北斗七星①    ウシノカ・ノチウ/クットコノカ・ノチウ/北斗七星/恒星カムイ
vol.2 星座 金星            金星/疱瘡のカムイ/フレケタ/セレマック/ベテルギウス
vol.3 星座 北斗七星②    シアラサルカムイノカ・ノチウ(尾の長い熊)/弓矢/舟
vol.4 星座 月と太陽       月/ア(月の知人)/三角星/鯨/イナウ/ひしゃく
vol.5 星座 四つ星          かたつむり/船/レラ・チャロ(風の吹き出し口)
vol.6 星座 天体と季節    月の形/朝昼夜/季節
vol.7 星座 めぐる星       追われる娘たち/蛇/踊る娘たち
vol.8 星座 動物たち      狐/貂/ホケウ・ノチウ(狼)
vol.9 星座 さそり①      龍
vol.10 星座 さそり②    ザリガニ/カンナカムイ(雷[龍]のカムイ)
vol.11 番外編              関連webサイト紹介
vol.12 星座 ねずみの倉  ねずみの倉/疱瘡のカムイ/日食
展示紹介                    アイヌ民族の着物を展示中!
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電子顕微鏡で・・・  電子顕微鏡でクマの毛を見てみました!
※連載は一旦終了ですが、今後も番外編を公開していきます。