ロクトリポート

プラネタリウム「ノチウ」星座 vol.6 天体と季節

皆様いかがお過ごしでしょうか。

多摩六都科学館の臨時休館が、5月末まで延長となりました(5月7日発表)。ということは…
4月から5月末までの投影を予定しておりました全編生解説プラネタリウム「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」も、投影がないまま期間を終了することとなりました。
楽しみにしてくださった皆様(おられるのでしょうか…? )、そしてご協力いただいた関係各所の皆様には大変心苦しく思いますが、新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために、そして来館者の皆様を危険からお守りするためにも、今、休館は必要です。それに、星や星座はまたいつでも楽しめるもの。アイヌ民族の星座をプラネタリウムでご紹介できる機会も、きっとまたあるだろうと思います。解説員によっては常日頃からアイヌ民族の星座を織り交ぜてお話ししていますし…。ということで、臨時休館が終わり、開館や投影が再開できましたら、ぜひご来館いただけたらと思います! それまではまず、皆様の安全とご健康をお祈りしております。

それでは、臨時休館と、全編生解説プラネタリウム「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」の投影中止に伴い、アイヌ民族の星座をweb上でご紹介する企画のvol.6です(初回は>> プラネタリウム「ノチウ」紹介 vol.0 )。
ご覧くださり、イヤイライケレ !!!!!!

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※アイヌ民族の星の話題は、この書籍からご紹介しています。
<出典> 末岡 外美夫(すえおか とみお)著
書籍 人間達のみた星座と伝承
『アイヌの星』/『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』
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※スマートフォンなどの画面では、星座の名前が正しく表示
されないことがあります。星座名を正確に表示するには
「PC用の表示に切り替える」などの機能をお試しください。
例:ラが小さく表示されればOK → レタ
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■まるく輝く月
昨日5月7日は満月でしたね。月や星をアイヌ語で何と呼ぶか、vol.4 でもご紹介しましたが覚えておられますか? アイヌ語で星は「ノチウ」。アイヌ語で月は「クネ・チュ・カムィ(暗い・天体・のカムィ)」。ただし呼び名は複数あります。
>> vol.4 星座 月と太陽

月は模様のないのっぺらぼうではなく、少し色の濃い部分が模様のように見えますね。この模様について世界中でいろいろな物語が作られましたが、アイヌ民族にはこんな物語が伝わっています。

「あるところに水汲(く)みを嫌がる少年がいた。水を汲むように言われると、『炉は水汲みをしなくてすむからいいなあ! 』と炉をたたき、『柱は水汲みをしなくてすむからいいなあ! 』と柱を叩き、桶を持って川辺へと降りて行った。しかしいつまでたっても少年は帰ってこない。
ウグイという魚の群れにたずねると、『少年はわれわれをいじめたから、教えてやらぬ』。
アメマスという魚の群れにたずねても、『少年はわれわれをいじめたから、教えてやらぬ』。
魚たちは向こうへ行ってしまった。
そこに、サケの群れがやってきた。
『少年はわれわれに“カムィの魚よ! ”と言ったので、少年の行き先を教えてあげよう。水汲みを嫌がる少年をクネ・チュ・カムィ(暗い・天体・のカムィ:月のカムィ)が怒って、捕まえていったのだ』
空を見ると、たしかに月の中に少年が立っていた。だから、末の世までも、水汲みを嫌がるな」

月の模様、あれは少年の姿だったのですね。
さて、今日は満月の一日後となりますが、満月はアイヌ語でこんな風に呼ばれます。

シカリ・チュ(sikari・cup)【まるく輝く・月】

また、海の潮の満ち干でも、チュプの名前が出てきます。
大潮 チュ・シカリ・シララ(cup・sikari・sirara)【月・がまるい・ときの潮=満月の潮】
小潮 チュ・ニ・シララ(cup・nin・sirara)【月・が細い・ときの潮=上弦・下弦の月の潮】

潮の満ち干と月の関係を、アイヌ民族もちゃんと知っていたのですね。
>> 潮汐の仕組み(気象庁webサイト 知識・解説ページ内)

■太陽とともにある一日
月の満ち欠けがひと月という単位のもとなら、一日という単位のもとになるのは、そう太陽。アイヌ語で一日の様子を見てみましょう。

夜明け(薄明)
ペケ(sirpeker > sir・peker)【世の中・が明るい=空が白む】
ニサッ(nisat)【明け方の空の白み=薄明】

朝(太陽が昇る頃)
ネィワ(kunneywa > kunne・wa)【暗さ・が [ 空を ] 渡る】
チュヘト゜ク※(cuphetuku > cup・hetuku)【太陽・が出る】
※ト゜…参考にした書籍では、ツとトの間の音をこの表記で記載していますので、当欄でもそのまま引用します。

午前
トナノキ・エトタ(tonanoski・etokta > tonanoski・etok・ta)【昼・の前・に】

正午(太陽が頭上にある頃)
トナノキ(tonanoski > tonan・noski)【一日・のまんなか】

午後
トナノキ・オカタ(tonanoski・okata = tonanoski・oka・ta)【昼・の後ろ・に】

夕方(太陽が地平近くにある頃)
トケ(tokes > to・kes)【日・のはずれ】
チュパフ(cupahun > cup・ahun)【太陽・が沈む】

日暮れ(薄明)
ネ(sirkunne = sir・kunne)【世の中・が暗い】


オヌマ(onuman)【夜】

夜中
キ(annoski = an・noski)【夜・のまんなか】

ニサッ(夜明けの薄明)からシネ(日暮れの薄明)まで
トカ(tokap > to・kap)【日・が覆う=昼間】

トカ(昼間)の反対
チカ(ancikar > anci・kar)【暗く・なる=夜間】

電気もガスも水道も時計もスマホもない生活の中では、空をめぐる太陽はどれほど意識されていたでしょう。現代の私たちも太陽の動きや明るさ、あたたかさを、時々は感じたいものですね。

■季節
今回は文字ばかりとなってしまいますが、せっかくなので季節を表すアイヌ語もご紹介しましょう。

パィカ(paykar > pa・e・kar)【年を・そこに・つくる=春】草木が萌え出て一年の活動がはじまる
(sak)【夏】輝く太陽の下で生命の躍動する季節
チュ(cuk)【萎(しぼ)む=秋】夏の季節の終わり
マタ(mata)【冬】雪の訪れからの季節

アイヌ民族は時の流れをサ(夏)とマタ(冬)の巡りでとらえ、その間にパィカ(春)とチュ(秋)が挟まるという季節感を持っていました。これは北海道の春と秋が短いことにもよります。あたりまえではありますが、季節の名前からも、自然環境をすぐそばで感じている様子がうかがえます。そして、地域によっては、vol.4 星座 月と太陽 でご紹介した、時季によって変わる太陽の日の出・日の入りの位置を見定めて季節をとらえていました。科学技術が発達した現代の私たちは、まるで自分が昔の人より多くを知っているかのように思ってしまうことがありますが、例えばチュケト(cupketok > cupka・etok)【東・の頭=夏至の“日の出点”】にあたる日本語なんて現代でも存在しませんね。

・・・・・

5月5日は夏の始まりである立夏、5月7日は満月でした。
現代の暦では、春夏秋冬は明確に基準が決まっており、地球が太陽のまわりを公転するひとめぐり、そして公転から生じる太陽の見え方の変化がそのもととなっています。
季節や暦に触れる道筋は、天文学、数学、季語などいろいろあります。奥深く少し難しい暦ですが、興味のある分野から紐解いてみるとなかなか楽しいかもしれません。
>> 暦Wiki(国立天文台 暦計算室)
>> こよみ用語解説(国立天文台 暦計算室)

それでは、前回のクイズの答え合わせです。

Q6 色を表すことば、「フレ」。これはどんな色?
<答> A6 赤

<おまけクイズ>
Q7 色を表すことば、「シ」。これはどんな色? 答えは次回!(火・金の14:00に連載予定です)

全編生解説プラネタリウム 「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」
開館が再開次第投影開始 ~ 5月31日(日)まで

※臨時休館延長に伴い中止が決定いたしました。再投影は検討中です。(5/7)

講演会 「ことばから見るアイヌ文化と自然観」
2020年5月30日(土) 17:10~18:40
講 師:中川 裕(千葉大学 文学部教授)
4月11日(土) 10:00より受付開始
※今後の社会情勢に応じて変更になる可能性があります。

※延期が決定いたしました。日程を調整中です。(4/17)
※一旦中止とし、改めて実施を検討いたします。(5/19)

<出典>
末岡外美夫(すえおかとみお), 1979. 『アイヌの星』
末岡外美夫(すえおかとみお), 2009. 『人間達 (アイヌタリ) のみた星座と伝承』
河原郁夫(かわはらいくお), 1995. 『新版 星空のはなし』第 2版

<全編生解説プラネタリウム「ノチウ」web連載@ロクトリポート>(リンクはご自由に)
vol.0 番組紹介            「ノチウ -アイヌ民族の星座をたずねて-」/アイヌ民族の星座
vol.1 星座 北斗七星①    ウシノカ・ノチウ/クットコノカ・ノチウ/北斗七星/恒星カムイ
vol.2 星座 金星            金星/疱瘡のカムィ/フレケタ/セレマック/ベテルギウス
vol.3 星座 北斗七星②    シアラサルカムィノカ・ノチゥ(尾の長い熊)/弓矢/舟
vol.4 星座 月と太陽       月/ア(月の知人)/三角星/鯨/イナゥ/ひしゃく
vol.5 星座 四つ星          かたつむり/船/レラ・チャロ(風の吹き出し口)
vol.6 星座 天体と季節    月の形/朝昼夜/季節
vol.7 星座 めぐる星       追われる娘たち/蛇/踊る娘たち
vol.8 星座 動物たち      狐/貂/ホケゥ・ノチゥ(狼)
vol.9 星座 さそり①      龍
vol.10 星座 さそり②    ザリガニ/カナカムィ(雷[龍]のカムィ)
vol.11 番外編              関連webサイト紹介
vol.12 星座 ねずみの倉  ねずみの倉/疱瘡のカムィ/日食
展示紹介                    アイヌ民族の着物を展示中!
※連載はvol.12で一旦終了ですが、今後も番外編を企画しています。