ロクトリポート

はやぶさ2が帰ってくる! 大型映像REBORN特集 3.フルドーム版と劇場版

小惑星リュウグウに行った探査機「はやぶさ2」が、いよいよ地球に帰ってきます。旅の様子を描いた大型映像「HAYABUSA2〜REBORN」を多摩六都科学館でも上映中ですが、もうご覧になりましたか?

10月16日、「HAYABUSA2〜REBORN」の上坂 浩光(こうさか ひろみつ)監督が上映前挨拶に来館されました。

12月6日の「はやぶさ2」帰還を目前に、なんと「HAYABUSA2〜REBORN(以下REBORN)」は映画館でも上映されています。そこで上坂監督に、探査機「はやぶさ2」、そしてプラネタリウム用REBORNと劇場版REBORNについて語っていただきました。今回が3日連続でお送りするインタビューの最終回です。

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1  決意したとき ― 作品づくり ―
(2020.12.2)

2 「はやぶさ2」は順調だった?? ― 探査の難関 ―
(2020.12.3)

3 帰還を前に思うこと ― フルドーム版と劇場版 ―
(2020.12.4) ★今日はこれ!
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  プラネタリウムと映画館

―― 当館でも上映している「HAYABUSA2〜REBORN」ですが、映画館でも公開されましたね。

上 坂「今回劇場公開される作品は、はやぶさ三部作の一作目「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」と三作目の「HAYABUSA2〜REBORN」を組み合わせた作品になります。だからはじめて見る人でもはやぶさミッションの全体像…初号機があって二号機が作られて行って帰ってくるんだ、みたいなことがちゃんとわかるようになっています。プラネタリウムドーム用のREBORNは43分ですが、劇場版は77分です」

―― フルドーム版(※プラネタリウムなどの、天井が丸いドームスクリーン用の映像)と映画館用の劇場版は、ストーリーの他にも違いはありますか?

上 坂「劇場版は通常の平面映像ですが、これはドーム映像を機械的に変換したわけではありません。ドーム版は観客の皆さんがリュウグウという場所に行ってもらい、周りを自由に見回してもらう見せ方ですが、劇場版はそのシーンを四角く切り取って見せるので、カット毎にドーム映像のどこをどの位の大きさで切り取るかというのを手作業で調整しています。これは演出に関わる部分なので、自分が1カットづつ確認して行っています。またそういう方法だとどうしてもうまくいかないカットもあり、そういうカットは初めから作り直しています。地球帰還シーンなどは、演出から変えていて、全面的に新規制作していますよ」

―― ドームと映画館、それぞれに合わせた映像になっているのですね。どちらで観るか迷ったら、どうしましょう?

上 坂「それぞれの利点に関して言えばやっぱり、プラネタリウムのフルドームは没入感が抜群じゃないですか。今日久しぶりにドームで見て「あーっ」て思いましたけど、本当にはやぶさ2と一緒にリュウグウに行って探査をした気になるというか、ミッションの手ごたえを感じてもらうことに関して言えば、フルドーム版は完璧だと思います。
劇場版は劇場版で、ものすごく画質がきれいですし、あと音もすごくいいです。ドームが悪いって言っているわけではないんです。ドーム版も充分きれいなんですが、比較すると劇場版はさらに画質がいいので細かなところまでよーく見えるんです」

―― 制作された本人でなくても画像の違いはわかりますか? 明るいんですか? 細かいんですか?

上 坂「わかりますよ。明るいし細かい。すっごいシャープだし、輝度があって、太陽が出たら眩しい」

―― 没入感があるフルドーム版も、はやぶさミッションがわかるうえに画質・音響も楽しめる劇場版も、どちらも見たいところです。ちなみに多摩六都科学館の東日本最大のドームスクリーン(直径27.5m)での映像体験もぜひ多くの方に体験していただけたらと思います。

  ついに帰ってくる「はやぶさ2」

―― さて、いよいよ「はやぶさ2」が帰還しますね。

上 坂「ミッションに関して言うと、これは素晴らしい成果ですよね。初号機は手探り状態だったのが、その経験のおかげではやぶさ2ミッションは何も大きなトラブルがないっていう、そういう進歩がすごいなって思うことと、あと運用している人たちの世代交代が確実に進んでいるということですね。確実に進められている。重要なポストに次の若い世代の人たちが入ってきたりしていて、昔第一線でやっていた人たちが教える立場にいる、託しているみたいなところがあって、いろんな面で本当に素晴らしいプロジェクトだったんだなって思いますね。

REBORNを作った時は、地球にカプセルを届けたらもうこのミッションは終わってしまうと思っていたので非常に悲しかったんですが、いまは拡張ミッションも計画されていて、ここからまた11年の旅が始まるっていうことで、まあほっとしてますね。拡張ミッションは厳密にはまだ実行予算がおりてなくて、提案・申請している段階ですが」

 ―■―   こぼれ話 拡張ミッション

「はやぶさ2」が地球にカプセルを届けた後、そのまま新たな探査へ進むという『拡張』ミッションが計画されています。何をする? どこへ行く? 紹介の動画を↓からどうぞ。ちなみにこの動画の制作は……(最後まで見るとわかります)

 【小惑星探査機「はやぶさ2」(@haya2_jaxa)Twitterより】

(※ブラウザ環境によって、もとのツイートが表示できない場合があります。その場合はTwitter公式アプリらご覧ください)

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―― さあ、とうとう「はやぶさ2」のカプセルが12月6日未明にウーメラに帰ってきますが、そのとき、上坂監督はどこで、なにをしておられるでしょうか。

上 坂「本当はウーメラに行きたい。ただこのコロナなので、今のところ目途はたっていないんですが(編集注:インタビューは10月に行いました)。行けない場合は、どうなっているんでしょう。きっとひとりじゃなくて誰か、みんなといそうな気がしますね。喜びを、やっぱり分かち合いたいと思います。

……はやぶさ2に限らずなんですけど、科学って、人間って、すごいなって思っていて。人間て地球上からは基本的には出られない、地表にへばりついて大気の底で生きているわけですけど、科学する力、想像する力っていうのか、それは時間と場所を超えて太陽系を抜け出したり、銀河系中心にブラックホールがあるとか、宇宙は膨張しているとか、宇宙の始まりがどうなっているのかというところに手が届きそうになっている。人の考える力、思考する力の勝利だと思うんですよね。

はやぶさは実際にリュウグウに行っているけれど、それも、軌道を決めて計算して、その通りコントロールして行って帰ってくるんですから。すごいことじゃないですか。だから人間の力、科学とかね、思考する力っていうのは素晴らしいし、そういうものを信じて、そういうことに関わって、生きていきたいなって思いますね」

―― どうもありがとうございました。

上坂監督へのインタビューは以上です。「はやぶさ2」がカプセルを本体から分離するのは日本時間12月5日14時30分、カプセルの大気圏突入は12月6日午前2時28分~29分、カプセルがオーストラリアのウーメラ地区に着地するのは 12月6日(日)の午前2時50分頃 と計画されています。
JAXAによるライブ中継一覧(JAXAイベントライブ配信専用チャンネル)

2014年12月3日から始まった「はやぶさ2」の旅もいよいよクライマックス。地球に向かっている「はやぶさ2」の応援とともに、カプセル帰還と「HAYABUSA2〜REBORN」をお見逃しなく!!

  おまけ
現在、館内には上坂監督のサインがいっぱい。素敵なサインなのでペガロクに案内してもらいましょう。

多摩六都科学館REBORN紹介パネル

多摩六都科学館REBORN紹介パネル

    上映情報    

HAYABUSA2〜REBORN フルドーム版(プラネタリウムドーム用 ノーカット 43 分)
多摩六都科学館で上映中。東日本最大27.5mのドームスクリーンでご覧ください。★詳細

HAYABUSA2〜REBORN 劇場版(映画館用 77 分)
各地映画館で上映中。★予告編・作品詳細はこちら

上坂 浩光(こうさかひろみつ)氏

イラストレーター、アニメーターなど手書きの映像制作を経歴の出発点とするが、CG黎明期のころから、独自に3Dソフトウェアーを開発し、CG映像制作を行ってきた。1997年有限会社ライブを設立。CM、ゲーム映像、フルドーム映像など、その制作分野は多岐に渡る。2009年、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還を描いた『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』は、全国のプラネタリウムで上映され大ヒット。数々の賞に輝いた。その後も数々のフルドーム映像作品を制作している。Twitter:@kawauso_twi