ロクトリポート

カワヨシノボリの稚魚が生まれました。

多摩六都科学館では、今年の4月11日に黒目川で自然観察会を行いました。参加者の皆さんは網を使って上手に魚を採集していました。


その中でも多く取れたのが「カワヨシノボリ」。

展示するために持ち帰り、館のバックヤードで飼育をすることに。
それから1か月以上たったある朝、水槽をのぞいてみるとヨシノボリのオスが石の下に隠れてエサもあまり食べなくなっています。
ヨシノボリの仲間のオスは石の下などに巣をつくり、そこにメスを呼び寄せメスが石の裏に卵を産み付けるとオスが卵を守り世話をするという習性があります。そのため、もしかして…と思い、そっと石を持ち上げてみると、石の裏にたくさんの卵が!!!


急いで水槽内の他の個体を別水槽に移して、孵化した稚魚が吸い込まれないようなフィルターにして、稚魚用のエサを調べて用意したりとスタッフも準備をしながら孵化を心待ちにしていました。
カワヨシノボリは他のヨシノボリの仲間と違い卵も大きく、孵化の期間も長くなります。
現在緊急事態宣言下のため、当館も休館し、スタッフの出勤にも一定の制約がある状態のため、毎日の観察はできなかったのですが、たまに観察を行うと卵がすくすく成長している様子はうかがえました。

そして、5月24日、孵化を確認しました。
残念ながら孵化の瞬間を見ることができなかったのですが、30尾ほどの稚魚が元気に泳いでいました。

ハゼの仲間は腹鰭が吸盤のようになっており石などにくっつくことができるのですが、稚魚の時にすでにくっつくことができたのにはびっくりしました。


おそらく産卵日は5月3日または4日。孵化した日はおそらく22日または23日。
約3週間近く一生懸命卵を世話し守り続けたヨシノボリのパパには頭が下がる思いです。

稚魚たちの成長は、このロクトリポートでお知らせしていきたいと思います。
※現在稚魚の展示は行っておりません。ご了承ください。

さいごに、このカワヨシノボリは本来は関東には生息していない「国内外来種」となります。
誰かが放してしまったのでしょうか?黒目川や近くの落合川でも生息が確認されており、すでにかなり個体数が増加しています。
「外来種」というと悪い生き物と思う方もいるかもしれません。しかし、陸や淡水の生き物は海を越えて他の国には行けませんし、移動の範囲も限られます。つまり、何かのために本来生息していた場所から人が移動させてしまうことによりこうした問題が起きています。
そして、全ての生き物は今回のカワヨシノボリのように子孫を残そうと与えられた環境の中で一生懸命頑張っていかなければなりません。一人一人が他の生き物に対してしっかり考えて行動をしていかなくてはいけないと感じた出来事です。