ロクトリポート

ロクトの庭から光るトビムシを発見!

多摩六都科学館 研究交流グループの大平が、科学館の庭から“光る”イボトビムシに関する大変興味深い発見をしました。その研究論文が海外の科学雑誌「ズータクサ」に掲載されました。
以下、大平からのご報告です。
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みなさんは「トビムシ」という生き物を知っていますか!?

トビムシは体長1〜3mmほどの節足動物で、腹部にある跳躍器(ちょうやくき)を用いて“ぴょんぴょん”と、とび跳ねることが「トビムシ」という名前の由来になったと言われています。腹部に「腹管(ふっかん)」という管状のトビムシ特有の器官を持ち、脚は6本ありますが昆虫とは別のグループ (系統) の生きものです。

森林の地面(土壌)をはじめ、植木鉢の土、洞窟、潮間帯(潮の満ち引きにより、海に浸かったり、空気にさらされたりする場所)、南極など様々な陸地の環境に棲息しています。実は身近にいる生きものなのですが、体長がとても小さく目立たないので、知らない人も多いと思います。

トビムシの姿は実に様々で、とても個性的です。世界で9,000種、日本で400種ほど知られています。見た目によって様々な種類(生物の分類で言うと「科」)にわかれ、私はその中でも、体の表面にイボがある「イボトビムシ科」の研究をしています。

光るトビムシがいることは300年以上前から知られていて、「大和本草」という日本最初の本草学書にも登場します。しかし、どのトビムシが光るか、種名まではこれまで謎でした。今回私は、顕微鏡で形態的特徴を確認したり、DNAによる分子系統解析をしたりして、その光るトビムシの正体を世界で初めてつきとめました。また、これまで光ることが報告されていなかったアミメイボトビムシ属というグループにも光るトビムシがいることを、多摩六都科学館の庭から新たに発見しました。

そしてイボトビムシが発光する様子の動画撮影にも世界で初めて成功しました。イボトビムシの姿と、光る様子を見てみて下さい。

【イボトビムシの発光】
https://doi.org/10.6084/m9.figshare.23702907

これらの発見・記録に加え、トビムシが光るかどうかを調べる独自の方法を考案して、既に知られている種の中から光るトビムシを見つけたり、今まで別の種類が間違って呼ばれていることを突き止めて、新たな命名や分類の整理をしたりと、他にもいくつかの発見をしました。

研究成果の詳細はこちらをご覧ください。
【プレスリリース】
発光トビムシの正体を解明!土に潜む、緑色に光る陸上最小の発光節足動物 (ynu.ac.jp)

【Zootaxa掲載論文】
Contribution to the taxonomy of Lobellini (Collembola: Neanurinae) and investigations on luminous Collembola from Japan | Zootaxa (mapress.com)

今回新たに光るトビムシを発見したのは、多摩六都科学館の庭という、私にとっては毎日のように通うとても身近な場所でした。身近にいる生きものほど、名前や姿・形を知っていると「この生きものについては知っている」と思いがちですが、ではその生きものが食べているものは?増え方は?冬の過ごし方は?と、改めて考えてみると、思った以上に知らないことが多く、調べてみたら実はまだ解明されていないことが少なくありません。

私もはじめ、科学館の庭にいたイボトビムシに出会ったとき、図鑑で調べても名前さえ突き止められませんでした。未知なものは、私たちの手元・足もとに転がっています。その存在に気づくことが、科学を楽しむきっかけになると思います。

皆さんも、自分の身の回りの環境を、いつもより一歩踏み込んで見てみてください。面白い発見が潜んでいるかもしれません。

研究交流グループ 大平