みなさんは「一番星」を見たことがありますか?
スマホで撮影!【今日の月と一番星「金星」】にもあるように、一番星は決まったひとつの星ではありません。夕暮れ時、最初に見え始めた星が、その日、その人にとっての一番星になります。
そもそも「一番星」という言葉も天文用語ではなく、厳密な定義があるわけではありません。でも、「見え始めた星」とすると、短くてもある程度の時間は、空を見上げてさがしていることが前提になります。
夕方見上げた空に、星が一つならそれが一番星になりますが、星が二つ以上あったら、もうどれが一番星かはわからなくなってしまいますね。
となると、忙しい毎日の中で一番星を見るというのは、なかなかぜいたくな体験ともいえそうです。見たことがないという方も、多いかもしれません。
それでもなんとなく「いちばんぼーし、みいつけた」のフレーズは、みなさん心に浮かぶのではないでしょうか。
この言葉、なんでそんなになじみがあるのかな、なんて思っていたら、そのものずばり『一ばんぼし みいつけた』という詩を、みつけました。
『ぞうさん』や『やぎさん ゆうびん』、『一ねんせいに なったら』などの童謡で知られる、まど・みちおさんの作品です。
その詩の一部。
「一ばんぼしも あたしを みいつけた」
あたしが「みつけた」一番星に、あたしが「みつけられる」。
さすが、まど・みちおさん。びっくりです。なかなかない発想ではないでしょうか。
でも、そんなふうに考えると、みつけた一番星と自分との間に、なにか特別なつながりがあるような、不思議にあたたかい気持ちになったりします。
Photo By T.HIRANO
一番星は決まった星ではない、と最初に書きました。けれど今は、だれにとってもわかりやすい一番星候補があります。夕方、西の空に輝きだす明るい金星(宵の明星)です。
とびぬけて明るいので、あたりがまだ明るいうちからみつけることができ、二番目の星が見え始めるまでにかなりの時間差があります。
つまり、一番星を見てみたいという人にとっては、今はとてもいいタイミングなのです。
星の楽しみ方も人それぞれ。「あ!明るい星がある」と気づくだけでもちょっと得した気分になります。「そうそう、実は欠けてるんだよね」なんて、科学的な知識を持って本物を眺めるのも面白いものです(→宵の明星を見ましたか?)。
さて、今晩みなさんのおうちから見える星はあるでしょうか。
Photo By T.HIRANO
なかなか人とも会えない今、一番星に限らず、ふと「目が合った」星と、秘密の話をしてみませんか。
まどさんには『いちばんぼし』という作品もあります。星も見えない夜には、ゆっくり詩を読んでみるのもいいかもしれませんね。
参考・引用文献:『まど・みちお詩集』ハルキ文庫(角川春樹事務所)
※ 星をさがす時は、ご自宅など安全なところでお願いします。また、子どもの皆さんはお家の方と一緒に見るようにしましょう。