「萌芽(ほうが)」や「ひこばえ」という言葉を聞いたことはありますか?
これは、切り株の脇から出てきた新しい芽のことを指します。
よく絵本の挿絵などで描かれている、これです。
植物には、てっぺんの芽を切り取ると脇の芽が成長してくる、という性質があります。
木を切り倒すと、それまで上に伸びることに使われていたエネルギーが脇芽の成長に回ってくるので
切り株から3本、4本、、、と「萌芽」と呼ばれる新しい芽が伸びてきます。
雑木林を育てるとき、この性質を利用した「萌芽更新」ということが行われます。
萌芽は、切り株が既に地面にどっしりと張っている根から水を吸い上げられますし、
風や大雨にも耐えられる土台があるため、成長が安定していきます。
つまり、ゼロ(種)から木を育てたり苗木を移植するよりも、早く林を育てられるのです。
そして萌芽がある程度育つと、そこから状態のいいものだけ残し、大きな木へと育てていきます。
よく根元で二又・三又に分かれた木が生えていることがありますが、
これは萌芽から育てた木=人が手入れして育てた木、と考えられます。
二又に分かれたコナラの木
ただ、この萌芽は、伐採した木にある程度勢いが残っていないと生えてきません。
科学館の雑木林に生えていた木は樹齢が50年以上のものも多く、
萌芽更新を期待したくても、おそらく芽が出てこなくて無理だろうと、あきらめていました。
ところが。
なんと現在4本の木から萌芽が出て、育っています。
これはその中の1本。
雑木林だったエリアの入り口すぐにある
コナラの切り株です。
5月のはじめくらいに、こんなに小さな芽が
生えてきました。
ただ、春に植樹した苗木の中には枯れてしまったものも出てきた頃で
木が大きく育つことの難しさ、林をそだてていくことの大変さを感じていました。
これもどのくらい育ってくれるかと、半信半疑で見守っていたところ。。。
現在はこんな姿になりました。
日当たりがとてもいい場所のせいか
あっという間に大きく育ち、
植樹した苗木に比べると、幹が太くなるのも早く
スクスクと大きく育っています。
こちらはクヌギの萌芽です。
科学館のカフェの前にあるカエデやエノキのかげに
けっこう立派な芽を生やしていました。
こちらも順調に大きくなっています。
この他にコナラとケヤキ1本ずつ、切り株から萌芽が出てきています。
これから寒いシーズンに入りますが、
期待を裏切って生えてきてくれたこの萌芽たちを
大切に見守っていきたいと思います。
(自然チーム H)