ロクトリポート

おおぐま座のお話

おおぐま座は、全天で88ある星座の中で3番目に大きな星座です。【参照:いちばん大きな星座は?
北斗七星があることでも有名です。

北斗七星は水を汲(く)む道具「ひしゃく」の形から名付けられていますが、おおぐま座の形もよくできています。多少無理やりですが、頭の三角形や足の先に2つずつ並ぶ爪の星など、暗い星を細かくつなぐとしっぽの長い熊の姿がイメージできるでしょうか?北斗七星は熊の背中からお尻、そしてしっぽに当たります。

―あれっ、熊ってこんなにしっぽが長かったっけ?

そう、生解説プラネタリウムでも、おおぐま座の絵を出して「何の動物でしょう?」と聞くと、お客様からは「たぬき」「きつね」「トラ」「ねこ」・・・いろいろな答えが返ってきます。

それでも、これは熊の星座なんです。

ギリシャ神話のお話では、このように伝えられています。

月と狩の女神アルテミスの従者で、森に住むニンフ(妖精)のカリストという美しい娘がいました。
アルテミスとともに森を駆け回って狩をしていたカリストを、空から見ていた大神ゼウスが見初め、自分のものにしようとアルテミスの姿に化けて近づきました。だまされたカリストはゼウスの子を身ごもってしまいます。純潔の女神でもあったアルテミスに追放され、カリストはひとりぼっちで息子アルカスを生みました。
すると、そのことがゼウスの妃・女神ヘラの耳に届きました。夫ゼウスの浮気相手が子供を産んだことを知ったヘラは大変怒り、呪いをかけてカリストを熊に変えてしまいました。カリストは泣く泣く息子と別れ、熊として森の奥で生きていくしかありませんでした。

息子のアルカスは他のニンフに育てられ、十数年後には立派な狩人に成長しました。あるときアルカスが森の中で狩をしていると、偶然にも熊の姿のカリストと出会いました。我を忘れてカリストは愛しい息子に駆け寄ろうとしますが、アルカスには恐ろしい熊が襲ってくるとしか見えません。目の前の大熊がまさか生き別れた母親とは気づかないアルカスは、弓をつがえてカリストを仕留めようとします。

それを見たゼウスが急いで2人を空に舞い上げ、アルカスも熊の姿に変えて星にしました。
カリストはおおぐま座、息子のアルカスはこぐま座になったということです(熊に変えたのはアルテミスであるとか、アルカスは弓矢でなく槍で突こうとしたなど、言い伝えは様々なバリエーションがあります)。

そして熊のしっぽが長いのは、大神ゼウスが空にあげるときに慌ててしっぽをつかんで投げ上げたために伸びてしまった、というお話です。

北斗七星のあたりの星々は、昔から世界各地で熊に例えられていたようです。
アメリカの先住民族には、熊と熊を追いかける狩人たち、という話や、ギリシャ神話と同じようにしっぽをつかまれて空に放り投げられたために(しっぽが)伸びてしまった熊、というお話があります。
プラネタリウム「ノチウ」星座Vol.3 北斗七星2でご紹介しているように、アイヌ民族のお話にも、ギリシャ神話とよく似たせつない物語が伝わっています。

北の空で北極星のまわりをゆっくりと回る星たちの様子から、のそのそと歩き回る熊の姿を想像するのは自然な流れなのかもしれません。【参照:北の空の星の動き(1)北の大時計

それにしてもそれぞれの話はとても似通ったところがあります。飛行機もメールや電話もなかった時代に、はるか遠く離れた場所で同じ星の並びを見て、同じような物語を考えた古代の人々。これってただの偶然?それともどこかで繋がりがあったのでしょうか。

今は電話やインターネットで瞬時に情報を交換できます。直接会えない家族や親戚、友達と、それぞれの場所から同じ星空を見て、オリジナルの星物語を考えながら比べ合うのも面白いかもしれません。

※星をさがす時は、ご自宅など安全なところでお願いします。また、子どもの皆さんはお家の方と一緒に見るようにしましょう。