『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』/安宅 和人 著/NewsPicksパブリッシング
科学の本棚Ⅱ~科学と女性~
【あなたの一冊 募集企画 入選作品】ペンネーム:武部 純子
『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』/安宅 和人 著/NewsPicksパブリッシング
世界中が不安に覆われた2020年に出会い、私に未来への希望を抱かせてくれた本をご紹介します。
社会の変化と意味合いを事実に基づき、全体観を持って語る建設的な議論がとても少ない中で、データサイエンティストの安宅和人氏が「未来は目指し、創るものだ」との信念から産官学での審議会や講演テーマをひと繋ぎに俯瞰したのが全6章、437ページにわたる本書です。
SDGsとSociety5.0の交点として、たくさんの図表から歴史と実態が数字から読み取れ、143の小項目を眺めるだけでもきっと興味を引かれるのではないでしょうか。
特に第2章「日本の現状と勝ち筋」の中の小項目【女性の限りない伸びしろ】の6ページの間は何度もわが意を得たりと頷くとともに、20世紀末の時点でハーバード大学学部生の入学者の半分以上が女性だったことには驚かされました。教育がリーダー層選出の基本システムになっている以上、東京大学の学部生の女性比率が20%の壁を超えることさえできていないことを「恥ずかしい国」として具体的な提言がされています。金太郎飴的な労働力ではなく、多様性が価値を生み出す時代、未来を生み出したいのであればジェンダー平等こそが最初に手を付けるべきポテンシャルの1つだ、などここに記された文章が広く読まれ理解されることを望みます。
湯川秀樹氏の「一日生きることは、一歩進むことでありたい」が高校生の頃から心にいつもある安宅氏は「風の谷を創る」プロジェクトも進めており、その豊かな憲章と実践が最終章の「ビジョンから未来をつくる」に綴られています。
滅入った時など、YouTubeで明るいお人柄(頭脳明晰ゆえにとても早口ですが)に触れるのも本書を手にするきっかけになるかもしれません。
謝辞には庵野秀明監督やジブリの方々のお名前があり親近感も湧く大作「シン・ニホン」は老若男女に、一家に一冊、というくらい私の推し本です。