科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

世界を変えた50人の女性科学者たち


『世界を変えた50人の女性科学者たち』/レイチェル・イグノトフスキー 著、野中 モモ 訳/創元社

科学の本棚Ⅱ~科学と女性~
【あなたの一冊 募集企画 入選作品】ペンネーム:佐伯 純子

『世界を変えた50人の女性科学者たち』/レイチェル・イグノトフスキー 著、野中 モモ 訳/創元社

 私がこの本(絵本?)を知ることができたのは、娘の高校の同級生で友だちの小野紗也香さんが、創元社の担当編集者だったからです。著者のレイチェル・イグノトフスキーは、近影と経歴を見る限り、娘たちと同年代と思われます。まさに現役バリバリの世代です。今この瞬間も、この本に収められた伝説的な科学者たちよりもはるかに多くの、同じように現役世代の女性科学者、技術者、活動家たちが、全世界で活躍していることでしょう。
 この本で紹介されているのは、女性にとって今よりももっと不遇だった時代に、恐れることなく信じる道を突き進んだパイオニアばかりです。50人の中で私が知っていたのは、伝記にもなっているマリー・キュリーと「沈黙の春」のレイチェル・カーソン、そして宇宙に行った最初の女性ワレンチナ・テレシコワの3人と、アメリカ映画「ドリーム」に登場したキャサリンン・ジョンソンの存在(名前は覚えていなかった)だけです。史上初の世界共通プログラミング言語、COBOLを編み出したグレース・ホッパーも知りませんでした。
 この本には、チャーミングなイラストと飽きさせない工夫がふんだんにあって、驚いたり、笑えたり、感心したり、悲しんだり、憤慨させられるようなエピソードがちりばめられています。結果として、ひとりひとりがとっても魅力的な人物として生き生きと甦ってくるのです。そういう意味で、優れた絵本と言えると思います。私は高校生の頃から、自分は文系で理系は無理!と決めつけて生きてきましたが、この本を読んで、中学生ぐらいまでは、遠い宇宙にあこがれ、天文学が好きだったことを思い出しました。
 最後に、一番心に残ったレイチェル・カーソンの言葉を紹介して終わりにしたいと思います。
 「人類はいまだかつてないほどに自分たちの制御力を示すことを求められています。自然をではなく、私たち自身を制御する努力が必要なのです」。