科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

ネコもよう図鑑

『ネコもよう図鑑』/浅羽 宏 著/化学同人

科学の本棚Ⅱ~科学と女性~
【私の一冊】宇佐美 徳子/高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 講師

『ネコもよう図鑑』/浅羽 宏 著/化学同人

 一見、可愛い猫の写真集。でも、よく見ると猫の写真の下に、wwOoaaC-D-S-T-L-のような謎の暗号が書かれています。これは猫の毛色と模様に関する遺伝子の組み合わせを記号で表したものです。三毛猫はほとんどがメスであるというのは有名な話ですが、これは茶色(オレンジ色)の毛色を発現する遺伝子(Orangeの略でOと表記)が性染色体であるX染色体上にあることによります。実は三毛猫の斑状の模様は、X染色体の不活性化と、それが細胞分裂によって生じた子孫の細胞にも伝わるという「エピジェネティクス」と呼ばれるメカニズムが関わる、なかなか奥深い現象でもあります。この本では、三毛猫はもちろん、遺伝子の組み合わせでさまざまな模様が現れるしくみを、たくさんの猫の写真とともにわかりやすく解説しています。著者は元高校の生物教師。猫の毛色の遺伝を授業の教材として使っていたエピソードも「あとがき」に記されています。授業を受けていた生徒さんと同様、私も猫を見かけると遺伝子を考えるようになってしまいました。ちなみに、私の愛猫チャイ(写真参照)は、wwOoaaC-ddSST-ll(白多めの長毛薄三毛)となります。