科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

気象を操作したいと願った人間の歴史

『気象を操作したいと願った人間の歴史 』/ジェイムズ・ロジャー・フレミング 著/紀伊国屋書店

 【私の一冊】藤江/インタープリターチーム(展示解説を行っています)

『気象を操作したいと願った人間の歴史 』/ジェイムズ・ロジャー・フレミング 著/鬼澤 忍 訳/紀伊国屋書店 

 近年問題にあがる地球温暖化への対策として、気候エンジニアと呼ばれる理論家は地球を冷やすよう提案している。 SFに出てくる話のような提案である。たとえば、太陽シールドを打ち上げて地球に日陰をつくる、硫酸塩などの物質を高層大気に散布して太陽光を弱める、大量の藻を異常発生させて青い海をどんよりした緑に変えるなどといった方法である。このような幻想的な主張について、過去の実践を土台にして展望していく話である。

 この本の目標としてあがっているのは、歴史からの十分な情報に基づく展望を明瞭に示すことであり、一つの対話を始めることである。現代の「地球工学」について、社会的・倫理的・公共的な対話ができればよいと思う。