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文房具図鑑 ~その文具のいい所から悪い所まで最強解説~

『文房具図鑑 ~その文具のいい所から悪い所まで最強解説~』/山本 健太郎 著/いろは出版

【私の一冊】成田/研究・交流グループ(ラボやサイエンスカフェ、企画展などの企画・運営、展示物のメンテナンスの手配など、いろいろなことに取り組んでいます)

『文房具図鑑 ~その文具のいい所から悪い所まで最強解説~』/山本 健太郎 著/いろは出版

 特別企画展のテーマ選びで 、どの年代にも科学の入り口になるようなモノは何だろう?と考えていた時に思い当たったのが、当時小学6年生であった山本健太郎さんがまとめた「文房具図鑑」でした。自由研究として小学生の素直な観察眼で書かれた手書きの図と文章による文房具の解説に、文房具メーカーがコメントをつけるという構成です。ふだん文房具の内部構造や材質、商品背景まで気にする人は多くないと思いますが、ハッと気づかされる指摘が随所に見られます。 本がヒットした背景には、文房具は誰もが使ったことがあり、家庭でも職場でも、世代が離れた人同士でも、共通の話題になり得たことが大きかったのではないでしょうか。
 他の調査も併せて、このテーマは幅広い世代をつなぐテーマになる!と確信し、文具メーカーや多摩地域の文具店、文具王の高畑正幸氏等々、過去最多となる方々に協力をしていただき、2019年春の特別企画展「ぶんぶん文房具展」*を開催しました。

 硬さの異なる鉛筆の書き比べ等、様々な展示や体験コーナーを用意しましたが、個人的に一番大変だったのは文房具の歴史年表の作成でした。世界各地の文明の記録が残っていることは、すなわち記録した文房具があったということです。その時代や地域の特性に合わせて使われていた文房具は、科学技術の進歩や文化の交流とともに少しずつ改良され、現在手に入る文房具は歴史の最先端に位置づけられます。

 「文房具図鑑」は日本の文房具が小学生が買える金額でありながら多種多様であることを示しています。誰でも情報発信できる社会になってもなおアナログな記録道具の文房具は作り続けられています。手書きだからこその価値が見いだされ、ニッチな文房具が、これからも生み出されていくことでしょう。その時、第2、第3の「文房具図鑑」が世に出ることを楽しみにしています。

 

*春休みからゴールデンウィークの開催期間(32日)中、39,461人が来館、54,160人が企画展会場に来場。

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