『パロマーの巨人望遠鏡（上）・（下）』／D.O.ウッドベリー 著／岩波書店

【私の一冊】柴崎／天文グループ（プラネタリウムでの星空解説、天体観望会、ドームでの講演会イベントなどの企画や運営をしています ）

『パロマーの巨人望遠鏡（上）・（下）』／D.O.ウッドベリー 著／関 正雄、湯澤 博、成相 恭二 訳／岩波書店

　本書は1950年に初版邦訳本が出版され2002年に再版されたものですが、今読み返しても興奮する内容です。ちなみにある元国立天文台長も、少年時代本書を手に取り天文学者を志したそうです。

　この本のテーマであるヘール望遠鏡の鏡の直径は5.08メートル（200インチ）、1948年に完成し、長い間世界一の座にありました。望遠鏡は鏡が大きいほど性能が高くなりますが、その分鏡は重くなり（重さなんと14.5トン！）、巨大な架台が必要になります。また運搬にも想像を絶する苦労があります。世界一のものを作るには、その当時の最高技術（時にはまだ存在していない技術）を用いる必要があることをありありと感じさせます。現代の最新巨大望遠鏡は、このヘール望遠鏡で開発された技術が随所に使われていることも知ることができます。望遠鏡好きな人には必読の一冊です。