科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

現代日本生物誌2「ホタルとサケ とりもどす自然のシンボル」

『現代日本生物誌2「ホタルとサケ とりもどす自然のシンボル」』/遊磨 正秀、生田 和正 著/岩波書店

【私の一冊】髙尾/研究・交流グループ(企画展、各種ワークショップの企画・運営の他、多文化共生事業にも取り組んでいます)

『現代日本生物誌2「ホタルとサケ とりもどす自然のシンボル」』/遊磨 正秀、生田 和正 著/岩波書店

 みなさんはサケおにぎりを食べたことはありますか?たくさんの方が、はい!と答えると思います。では、野生のサケをみたことがありますか?

 この本では、サケを「自然再生のシンボル」ととらえ、その生態や人とのかかわりについて幅広く紹介しています。

 私の故郷の街、札幌では、190万以上の人が暮らしているにも関わらず、都心を流れる豊平川にたくさんのシロザケ(みなさんが一番良く食べている鮭の正式名称)が母川回帰し、自然繁殖しています。
 サケが札幌の川に戻ってきたのは昭和50年代でした。市民も参加する放流事業が盛んに行われるようになり、サケは「清流のシンボル」として各地で放流ブームが起きました。放流後のサケは、ほとんどを海で過ごすので、実は清流であることよりも、遡上を遮る堰に魚道を整備したり、湧き水のある産卵環境が重要です。それらの条件を満たさない河川でも放流が行われていましたが、やがて放流の見直しや河川環境の改善も行われるようになっていきました。

 私は以前、サケを飼育展示する科学館に勤務し、フィールド調査、人工ふ化放流事業に長くかかわりました。サケからは、回遊魚の生態、河川環境、工学、食文化、産業、歴史、民族とのかかわりなど様々なことを学びましたが、一番の学びは目の前を流れる川にたくさんの生き物がいることに気づき、それらの暮らしには人間が大きな影響力を持っていることでした。

 みなさんにとってそのような生物はいますか?科学館でお会いすることができたら、ぜひお聞かせください。