科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

物理学とは何だろうか(上)・(下)

『物理学とは何だろうか(上)・(下)』/朝永 振一郎 著/岩波新書

【私の一冊】青田/多摩六都科学館ボランティア(展示室で来館者とのコミュニケーションや科学教室のサポートをしています)

『物理学とは何だろうか(上)・(下)』/朝永 振一郎 著/岩波新書

 熱力学が初めて腑に落ちた本です。

 物理系の出来の良くない学生だった頃、初めて熱力学を学んでいてひどく戸惑いました。というのは、力学や電磁気学ではその出発点に基本方程式(群)があり、それに初期条件が与えられれば解が一意的に求められるのに対し、熱力学ではそうではなかったからです。当時、熱力学の教科書を何冊か当たりましたが、その論理をうまく掴むことが出来ずもやもや感が残りました。

 そんな時出会ったのがこの本でした。分子運動論を軸にその歴史的発展過程を通して論理構造が丁寧に述べられていました。縦書きの文中に数式が所々出てきたりして、決して読みやすい本ではありませんでしたが、読み進めていくにつれナルホド感がつのり、読了後には労苦以上の納得と理解が得られ、もやもやが払拭されていました。