科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

春の数えかた

『春の数えかた』/日高 敏隆 著/新潮文庫

【私の一冊】蓮田/パブリックリレーションズグループ(たくさんの人に、多摩六都科学館のことを知ってもらう広報の仕事をしています)

『春の数えかた』/日高 敏隆 著/新潮文庫

 在宅勤務の期間中に庭の手入れをし、料理に使えるハーブを育てるようになりました。初心者でも育てやすいバジルはすぐに丈が伸び大きな葉をつけるようになりましたが、ある日突然、その葉っぱに白いくねくねとした線を見つけました。エカキムシという害虫のようでした。これは長い戦いになるかもしれない。まず大事なのは「敵を知ること」だと思い、調べものをしているときに見つけたのがこの本です。

 著者は動物行動学者で、目次をめくると「動物行動学としてのファッション」というタイトルが目に入りました。クジャクの美しい尾羽との比較で、コム・デ・ギャルソンが言及されているとは!専門家による分析は興味深く、時間を忘れて読み進めました。

 「ボディーガードを呼ぶ植物」には、エカキムシと同じく葉を枯らしてしまうハダニの話がありました。ハダニによってダメージを受けた植物はSOS信号を出して、ハダニの天敵であり人間の味方であるダニ・チリカブリダニを呼ぶのだそう。そういえばトウモロコシとエダマメは、いっしょに育てることで害虫を抑えるなど生長を助けるコンパニオンプランツ(共生植物)だったのを思い出しました。

 このエッセイ集は自然界の不思議、生きものたちの行動、人と自然の関係について考えるきっかけになりました。今までは目を背けたくなっていた庭ですが、たくさん面白いものが散らばっていたんだと再認識しました。暑い夏が過ぎれば、また植え付けの時期がやってきます。今からとても楽しみです。