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大地の子エイラ 始原への旅だち 第1部

『大地の子エイラ 始原への旅だち 第1部 』/ジーン・アウル 著/評論社 

【私の一冊】安倍/パブリックリレーションズグループボランティア会の活動サポートや、学校や市役所と連絡を取る仕事をしています。)

『大地の子エイラ 始原への旅だち 第1部 』/ジーン・アウル 著/中村 妙子 訳 /評論社 

 この物語の主人公は、一瞬の地殻変動で、家族、住居が地中に飲み込まれてしまった、5歳のクロマニョン人、エイラ。ネアンデルタール人の部族に助けられ育てられた彼女は、コミュニケーションの仕方もジェンダーの考え方も全く違う中で、愛も受け、差別も受け育っていきます。

 紀元前3万年ころを舞台としたこの物語は、作者の莫大な量の調査と研究に基づいており、私の旧石器時代へのイメージを覆しました。ハラハラ、ドキドキと当時の様子がせまってきます。 

 エイラが石投げ器を使って遠くへコントロールをつけて石を投げられるようになったことで、女性なのに狩りができるようになり、その後も、次々と器具を創作し、薬草の知識を得、と、なんというスーパーレディであろうか! ありえないのでは?と感嘆とともに疑問も持ちました。しかし今では、祖先が知恵を絞りながら、ひとつひとつ技術を身につけていき、伝承し、改良し今に至った、その長い道のりを、エイラという一人の女性の一生で表しているのだと私なりに考えています。 

 この本に出合ったのは、子育て真っ最中の時に通っていた「赤ちゃんと遊ぶ会」でした。自由に借りられる本がたくさんあって、いつも子供に読み聞かせる本を選んでいたところ、主宰の方に「自分の読みたい本を選びなさい」と声をかけられて選んだ最初の本がこの「大地の子エイラ」でした。子育て期間ぷっつりと自分のための本を読んでいなかった私にスイッチが入り、夜は読書三昧の時間になりました。 

 ※この物語は、日本では1983年に翻訳初版が出ています。原書の第1部から4部までは、1980年から90年の10年間に出版されていますが、その後、第5部が2002年、第6部は2011年です。作者のリサーチに長い時間がかかったようです。評論社から出版されたのは第4部までですでに絶版。その後、ホーム社から「エイラ地上の旅人シリーズ」として完訳版が16冊出版されています。