『増補改訂 アースダイバー』/中沢 新一 著/講談社
【私の一冊】田島/多摩六都科学館ボランティア(からだの部屋でのコミュニケーション、科学館イベントのサポートなどをしています)
『増補改訂 アースダイバー』/中沢 新一 著/講談社
私は以前より多摩地区周辺の街道や寺社・名所旧跡の地理・地形・由緒等を確認するため現地を訪れることを楽しみにしてきたが、近年は科学館ボランティア仲間数人とグループで出掛け、先達(リーダー)より用水路などの地形・地質の説明を受けたり、草花・樹木・鳥の名前を教えて貰ったりして好奇心を満たせる機会も増えてきた。
ただ、直近では新型コロナウィルス対策の影響で外出・遠出を自粛・抑制せざるを得なくなったのは残念であるが、何れ事態が沈静化し改善されていくときには、都内各スポットの地理と歴史を一体的・重層的に捉えられる本書は、ぶら歩きのよきお伴になるものといえよう。
即ち本書は、「東京の洪積地(台地)と沖積地(低地)の境界地帯に、旧石器時代・縄文時代から祭祀場が設けられ、それと同じ場所に中近世には寺社が造られ、さらにそれらが近現代の土地開発にまで及んでいる」との論旨を主軸に置いて2005年に出版されたものである。その後、著者は、初刊本では東京・下町地区等の記述不十分としてこれの拡充を図り、2019年に増補改訂版を出すに至った。
なお、本書には都内各所の大昔から近現代までの遺跡・寺社等を地図にプロットした鳥瞰図が多数収録(「新宿~四谷」、「渋谷~明治神宮」……「大宮八幡宮」周辺、「野川公園」周辺等々)されており、これを眺めるだけで「そぞろ歩き」「ぶら歩き」に出掛けたい気分に導かれるだろう。
ちなみに著者の中沢新一は宗教史学者、哲学者、思想家で、チベット仏教、民俗学、民族学を学び触発され著書多数。父・厚は民俗学者、叔父・網野善彦は著名な歴史家である。