科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

選択の科学

『選択の科学』/シーナ・アイエンガー 著/文藝春秋

【私の一冊】鈴木真理/アテンダントチーム(チケット販売や手続きなど、入り口で館内を案内しています)

『選択の科学』/シーナ・アイエンガー 著/櫻井 祐子 訳/文藝春秋

 著者は、インドからの移民であり、シーク教徒の両親のもとに生まれた。シーク教徒は、生活様式、就職、結婚、全てが定められている。また彼女は視覚障害を発症し、高校へあがる頃には全盲となった。そのような環境の中、アメリカの学校で「選択する文化」に触れ、選択がどのように組み立てられ、実践されているのかを研究するようになった。

 この本には興味深い研究結果が多々示されている。例えば、スーパーの試食コーナーに24種類のジャムと6種類のジャムを並べたときでは、どちらがよく売れるのか?結果は6種類の方であり、人間の処理能力は7個以上になると限界に達するため、購入促進には結びつかない。

 その他、選択への固執や偏りが紹介されているが、私が関心を持ったのはそのアプローチだ。テーマを設定し、実験する。さらに条件を変え実験する。その結果を突き詰めるために、過去の情報を参照し、他の視点の情報を集めて分析し、他者に伝えるために表現する。またその結果をより善い社会実現、幸福に役立てるのにはどうしたらいいのか考え、実行する。書籍のジャンルとしては社会心理学に属するが、科学的なすぐれたプロセスだと思う。