科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

はじめてであう すうがくの絵本

『はじめてであう すうがくの絵本』/安野 光雅 著/福音館書店

【私の一冊】原/パブリックリレーションズグループ(標本登録や、図書館と連携した活動をしています)

『はじめてであう すうがくの絵本』/安野 光雅 著/福音館書店

 子どもの頃から絵本の多い環境で育ちましたが、今にして思うと物語よりも科学寄りの絵本の方が多かったようです。安野光雅さんの絵本もその中の一つでした。世界にあるふしぎを科学の目で解き明かしてくれる他の本とは違って、むしろ絵本に描かれたふしぎな世界へ引き込まれ、そのふしぎに翻弄されることを楽しんでいたように思います。

 大人になってから読み返して、安野さんの描く「ふしぎ」には数学がかくれていることに気づきました。エッシャーのようなだまし絵、ゆがんだ鏡に映して読める文字、一筆書きなど、ふしぎの背景にはちゃんとルールや法則があったのです。

 「はじめてであう すうがくの絵本」は、よくある小さな子ども向けの数の数え方の絵本とは違って、数学の考え方・モノの見方を教えてくれます。風景の中にある要素を丸いだんごに置き換えて(記号化して)数える、右と左、順番(数列)といったことが段階的に丁寧に説明されるので、逆に、いつも当たり前に捉えていたことが、実は無意識のうちに数学的な視点で処理していたのだと再発見する場面もあります。

 算数・数学が苦手な人にも、「数学って面白い考え方するんだな!」ということを感じさせてくれる本です。