ロクトリポート

はじめよう!望遠鏡で天体観察 ~完全版~

みなさん、8月はいかがお過ごしでしょうか?
暑い日々が続く中、科学館から新しいロクトニュースが発行されました!

ここでは、ロクトニュース113号に掲載したコラム「はじめよう!望遠鏡で天体観察」の完全版をお届けします!

さて、このコラムでは「はじめて」使う方にむけた3つのポイントをご紹介していますが、ポイントのお話の前に…

まず、どの望遠鏡を選んだらいい?

というギモンを持つ方も多いと思います。そうですよね、手元に望遠鏡がないとはじまりません。

はじめて望遠鏡を使う方へは、カメラやビデオの三脚に取り付けることができるタイプのものがおすすめです。これから紹介する天体も、十分に観察できます。
レンズを交換したり、買い足す必要もないので、はじめから大きな望遠鏡を買うのはちょっと怖い…という方にもおすすめです。

(多摩六都科学館のミュージアムショップでもお取り扱いがございます!!)

それでは、3つのポイントをご紹介します。まずは、

1.三脚をしっかりと立てる

望遠鏡そのものの使い方と同じくらい重要なのが、望遠鏡を支える三脚です。
まずは、立てる場所です。坂になっている場所や、デコボコとした場所は、三脚がぐらぐらしやすくなります。
三脚がゆれると、ターゲットもゆれてしまうので、ピント合わせも観察も難しくなります。
また、1kgを切るくらい軽い三脚だと、持ち運びはしやすい一方で揺れやすく倒れやすくもなるので、少し重みのある、ずしっとしたものの方が扱いやすいです。

つづいて、立て方のポイントです。

まずは3本の足をしっかりと開きましょう。
そして、斜めにならないように均等に足をのばします。ロックを外すときには、指を挟みこまないように十分に気をつけてください。指の皮を挟むと、とっっっても痛いです。
地面が坂になっている場所では、斜めに立たないように地面のかたむきに合わせて足の長さを微調整してくださいね。


▲地面の傾きや、使う人の身長にあわせて3本の脚(あし)をのばしましょう。

また、三脚には首をのばすためのネジ、首を左右に動かすためのネジ、首を上下に動かすためのネジなど、たくさんのネジがついています。いざ、観察したい天体が見つかった時、焦ってむりやりに動かすと三脚がこわれてしまいます。暗くなる前に動かし方を確認しましょう!

▲三脚ごとに動き方がちがうので注意!どこを回すと、どう動くのか、暗くなる前に確認しましょう。回しすぎてネジが外れないように気をつけて!

2.ターゲットは肉眼で見える天体に

見えないターゲットに望遠鏡を合わせるのは、望遠鏡の扱いに慣れている人にとっても難しいことです。コンピューターが自動で星を探して、望遠鏡を動かしてくれる装置もありますが、お金がかかります。

明るくて見つけやすい天体も、望遠鏡でじっくり観察すると新しい発見がありますよ!

この夏、望遠鏡での観察におすすめの3つの天体を、難易度ごとに紹介します。どれも倍率15倍の望遠鏡で観察できますよ!

初級 ~月~

一番見ごたえがあるのは明るい満月かと思いきや、望遠鏡での月の観察は、欠けている時がおすすめです。 明るいところと、暗いところの「境目」に注目してピントを合わせると、クレーターなどのデコボコとした表面の地形がよく見えます。星を観察する前に、大まかにピントを合わせる際にも役に立ちますよ!

中級 ~ガリレオ衛星~

この夏、見ごろを迎える木星の周りにはたくさんの衛星があります。その中でも、倍率15倍くらいの小さな望遠鏡でも見ることができる、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストの4つの衛星を「ガリレオ衛星」と呼びます。イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが自分で作った望遠鏡で最初に見つけたことが由来です。

ガリレオ衛星は、まぶしく輝く木星のすぐそばで、ぽつぽつと光っています。しかし、地球から見て木星の裏側に回ってしまったり、木星の影に入ったりすると見ることができません。日によって、4つすべて見えることもあれば、2つしか見えないこともあります。

また、木星をひとまわりするのにかかる日数が短いので、毎日並び方が変わるのも見どころです。木星のいちばん近いところに見える星が、いちばん内側をまわる星(イオ)とは限りません。記録をつけて、見え方が変わるようすを調べるのも立派な自由研究になりますよ!

上級 ~はくちょう座のアルビレオ~

はくちょう座のくちばしあたりに輝く3等星のアルビレオは、肉眼では1つの星ですが、望遠鏡だと2つに見える「二重星」です。はくちょうの尾に輝く1等星「デネブ」から、お腹の2等星「サドル」のほうに空をたどっていった先に見つかります。街の中からでも、暗さに目が慣れると見つけられます。

「北天の宝石」とも呼ばれ、トパーズとサファイアにたとえられる色のちがいも見どころです。ただし、ピントがずれていたり風が吹いていて望遠鏡が揺れたりすると2つに見えません。風がなく、よく晴れた日の観察がおすすめです。

番外編 ~望遠鏡での観察に向いていない天体~

中には、望遠鏡での観察に向いていない天体もあります。

たとえば、流れ星や国際宇宙ステーション(ISS)など、「動くもの」の観察は、出来るだけ空を広く見ることができる肉眼がおすすめです。

そして、望遠鏡で絶対に観察してはいけないのが太陽です。
ただでさえ目がくらむほどの強い光を出している太陽ですが、望遠鏡でさらに光を集めた状態で見てしまうと、失明してしまう可能性があります。

望遠鏡を太陽に向けるだけでも、中のレンズや筒の部分が熱くなってゆがんでしまったり、集められた光で火傷をしてしまうこともあるので、太陽が出ている間に使用するのはやめましょう!

3.ピント合わせは星が一番小さくなるように

ピントはこれで合っていますか?と聞かれることがしばしばあります。

実は、ピントは人それぞれの視力によって異なります。なので、「正しいピント」も人によって異なります。
ピント合わせにこだわって、時間をかけすぎてしまうと、星が動いて望遠鏡の視野からいなくなってしまいます。
空がかすんでいる日や、風が強く吹いている日には、どうしても天体が少しぼやけてしまうことがあります。惑星などは、輪郭がはっきりしないのが普通ということもあるので、その日・その時に星が一番小さく見えるところに合わせて観察をはじめましょう。

※ピント合わせが上手く行かないときは、思い切って大きくぼやけさせてから、同じ方向に回し続けてみましょう。なかなか合わなくても、すぐに逆に回さないのがコツです。

以上、3つのポイントをおさえて、お家から望遠鏡で天体観察にチャレンジしましょう!
毎月の星図や、おすすめの天文現象・見ごろの天体を紹介している今月の星空もぜひ参考にしてくださいね!

※星や月を探す時は、ご自宅など安全なところでお願いします。また、子どもの皆さんはお家の方と一緒に見るようにしましょう。