<Qua(クワ) Qua(クワ)ワークショップ>2023 さわって、きいて、表現しようの2回目を、2023年12月20日に開催しました。
テーマは「きく」
講師はレッジョ教育を広める会@キオッチョラ@の皆さんです。
講師のおひとり、石井さんは4年間イタリアのレッジョ・エミリア市で幼児教育を学ばれていました。
レッジョ教育とはモンテッソーリ、シュタイナーと並ぶ世界5大幼児教育のひとつで、子どもの主体性を引き出す教育として、現在とても注目されています。
※過去に当館で行ったワークショップについて詳しくはこちら
テーマについて
2023年度は「さわる」と「きく」がテーマで、12月は「きく」がテーマです。1回目の様子はこちら
レッジョアプローチでは、五感をつなげることでいろいろな表現がうまれてくるという考えから、五感をつかった表現活動をします。今回は「聴覚」を意識しました。また、前回の素材は自然物がメインだったのですが、今回は人工物。音を楽しめそうな人工物を並べました。
音の世界
今回は、はじめの挨拶の前から親子で音あそびをして待っていてもらいました。用意したのは金属でできたオタマ、フォークなどのキッチン用品にタコ糸を結んだもの。これらで骨伝導を体感することができます。いろいろな音を体感して、「音」「きくこと」を意識してもらいました。
挨拶したら、またすぐに子どもたちはトンネルの向こうの世界へ!2回目ということで、みんなすっかり慣れて全員が元気にトンネルをくぐっていくことができました。トンネルをくぐるとすぐに、探求の場所へまっしぐら!連続講座のかいがありました。
「どんな音がするかな?」と投げかけるだけで、
【子どもたち】「これなんだろう?」「(たたいて)カンカン!」「(振って)シャカシャカ!」「これとこれはおんなじ音だね」「いっしょの音かな?」「こわい~」「いたい(音)」「もしかして、おなじ銅でできてるんじゃない?」などなど話しながら夢中で探求をしていました。
アプローチ(音とあそぼう)
一通り探求をした後、みんなで集まり石井さんのアプローチです。今回はミロの絵をみんなで一緒にみて、音にしてみました。
石井さん:「この赤い線はどんな音かな?」
子どもたち:「じゃーーーーん」「ゴウンゴウン」
石井さん:「この黒い丸はどんな音かな?」
子どもたち:「ドン」「ポン」「チカンチカン」
石井さん:「次の小さな黒い丸はどんな音かな?」
子どもたち:「チーン(ちいさく)」「トントン(ちいさく)」
など、子どもたちは迷いなく絵を音で表現していきました。
石井さん:「次はこの絵をみんなで拍手で表現してみましょう!」
子どもたち:「(大きく)パン! (ちいさく)パンパンパン・・・・」
と、拍手の大きさやからだを使って動きで表現していました。
石井さん:「じゃあ、今度は音を聞いてみましょう!みんな目をつぶって。」
今回は、4種類の機械音をききました。身近な分かりやすい機械の音ではなく、ブリキ人形の音や、研究施設の特殊なコンプレッサーの音などの不思議な機械音を用意しました。
石井さん:「どんな音かな?」
子どもたち:「こわい~」「アヒルみたい」「電車みたい」「隕石が落ちた音みたい「走っている音みたい」「カコカコカコ」「レース?」「キッチンみたい」「笑ってる」「踊っているみたい」などなど
石井さん:「どんな線かな?」
子どもたち:「ガタガタ」「まっすぐの線」などなど
音を描く
石井さん:「ではみんなで今の音を描いてみましょう!」
前回に引き続き、使う素材は「陶芸用の粘土」です。粘土を水で溶かしたドベを筆を使い描きます。先ほどの4つの機械音を何度も流し、音をききながら線や点をどんどん描いていました。
「トントントントン。描いてても描いてる音がする!」「ガタガコってどんな線だろう?」
石井さん:「次はみんなで音を描いてみましょう!」
個人ワークは画用紙でしたが、グループワークは大きな障子紙です。障子紙を配ると「いいにおい!」「あまいにおいがする!」と障子紙をくんくん嗅いでいる子どももいました。
「すごくちいさい点がかけたよ!」「海の音みたいにかけたよ」「波の音」「水の音をかいてみるね!」「アンモナイト描こうかな」「みんなの線つなげよ!」「つながったね。パチパチパチ!(拍手)」
レッジョアプローチでは個人ワーク(個人の表現)とグループワーク(共同での表現)の両方をとても大事にしています。自分や相手、個人の考えを大切にし、しっかり表現できることも大切ですし、「共同でなにかをする。」という経験をワークで体験することも大切だと考えているからです。
大人のワーク
大人には、粘土の絵の具をつくるところから体験してもらいました。粘土を1週間ほど乾かしたカチカチのものを用意し、砕いたり、すりつぶしたり、削ったりして粉にします。そのあとは、水や水のりなどを使い土の絵の具をつくりました。できた絵の具で指や筆を使い描きました。大人も個人ごとの画用紙の表現、隣の方との共同の表現を体験してもらいました。
石井さん:「大人のみなさんもグループで楽しんでください。初めての方同士も遠慮せずに「こんにちは」の線を描いたりしてみてください。何かをしなくちゃ。何かを描かなくちゃなど思わなくて大丈夫ですよ。」
土って変身するよ。
箱田さん:「今、みんなが描いてた絵の具は、前の時に遊んだ粘土をお水で溶かしたものでした。この粘土は乾いたり、焼くと固くなります。800度で焼くとこんなに固くなります。でも、これだと、水とかスープを入れられないよ。これにガラスの釉薬(ゆうやく)っていうのをかけて1200度で焼くと、みんながごはんを食べるときに使えるおちゃわんになるよ。」と実物を交えて説明し、みんなで触って確かめました。
みんな興味津々に話を聞いていました。
粘土にスタンプやへらでもようをつけよう!
今回は人工物で模様をつけていきます。ブロックのおもちゃやフォーク、口紅のキャップ、ビンの王冠などを使い様々な模様や線をつけていきます。模様を消したかったら、なでると消えるので何度もいろいろな模様を試すことができます。
「穴があいた!いってきまーす」「きれる」「(棒を使って)ぐるぐるしたらこんな穴があいたよ!みて!」「おもしろいもよう」「きれいなもよう」「どうくつ」「(フォークでけずるようにして)チクチクだらけ!」「(スタンプを押し込み過ぎて)見えない!うまっちゃった。」
粘土にいろいろな模様をつけて実験した後は、いよいよ作品をつくります。
カタチを選んで、きって、かざってみよう
まる○さんかく△しかく□から好きなカタチを選び、粘土を切り抜きます。切り抜きができたら好きな模様をつけます。
「(切り抜きが)できたーーー!やったーー!」「あっ!!おんなじ(カタチ)だね!」「(切り抜いた後の粘土をみて)トンネルだーー。」
線が描けたら、ビーズなどで飾りつけをしました。「幼児期に本物に触れるのは大事。」という考えから、今回は特別にイタリアから帰ってきたばかりの講師の石井さんがベネチアで、本場のベネチアングラスのきれいなビーズをたくさん買ってきたものを用意しました。色がとってもきれいで、上質なものは子ども達もすぐに分かるようで目の前に出した瞬間に「わ~~~!!!きれい!!」「かわいい!!!」「クリスマスをつくるぞ!」「なくしちゃいそうでこわい」など話ながら、丁寧に一粒ずつ選びながら楽しそうに飾りつけをしていました。
完成したら透明ケースにいれました。
休憩時間も探求はとまらない…!
粘土が手に付いているので、トイレの水道で洗う前にバケツで手を洗ってもらいました。先月も同じことをしているはずですが、今回は「音」に注目しているので、一緒に洗っている子同士で「手を洗う時の音もすごく良い音するね!」「この音すきだな。」など話していました。手がきれいになると休憩時間も、音の探求コーナーで様々な実験をしていました。
「がっきみたいだね!」「(金属同士をたたいて)いいおと~~」「こわれそう!こわしたい!(ゴムを切りたかった様子)」「カチカチカチ!!」「こればくだんかな?」「(卓上ベルをいろいろな方向から見ながら)どうして音がでるのかな?」
保護者の方にも自分たちの作品や、探求コーナーをたくさん紹介したいようで、親子で話をしていました。
シェアタイム
最後は自分でつくったものや、つくった時の気持ちを言葉にしてみんなに伝えます。今回もひとりづつにインタビューしました。
「ビーズをつなげるのがたのしかった」「(ビーズを)好きな色(黒、青、ゴールド)にできたのがうれしかった。むずかしくなかった。」「スタンプするのがたのしかった」「ゴーゴーの音がかけた」「イチゴクッキーつくった」「あひるみたいな音の線、プロペラみたいな音の線がかけた」「深海6500」「電車の音」「満月ができた。丸のなかの丸がすき」「どんどんつなげた」「でんしゃのおと」「きみどりが好き」「きれいにできてうれしかった」「線をひいて、かざりをいれてみた」「(ビーズを立体に組んでいる)町。電柱、おうち。四角のなかを4つにわけた」「ふしぎだった」「走っている音、きもちよかった」
などなど発表していました。子ども達の発表のたびに石井さんからのコメントもあり、みんなも他の子の話に耳を傾け、一緒に作品を見つめていました。
中には恥ずかしくマイクで自分の言葉は語れない子もいましたが、恥ずかしがっていても石井さんはしっかりとインタビューをしていて、石井さんは子どものしぐさや表情で表現することを受け取っていました。
石井さん:「自分のつくったものや、つくった時の気持ち、好きなポイントなど、言葉にして人に伝える経験も大事。日本の保育現場ではこういう発表の場が日常的にはないこともあるが、大人になってからもこういった発表する場面はあるので、小さいころから繰り返す経験は必要なことなので全員にインタビューしました。」と、話されていました。
石井さん:「とてもデザインされているものがたくさんできていました。小さな人も美しさを感じ、無意識にやる余白のよさが出ている。アーティストも『子供のような表現を目指す』というけれど、大人は配色、配置などすごく意識してしまう。子どもにしかできない美しい表現がたくさん見られる。」などお話されていました。
ご参加頂いたみなさまありがとうござざいました!
【粘土の扱い】
今回使用した粘土は「陶芸用の土の粘土」でした。ビニール袋でしっかり保存しておくと、長い間遊べるようです。もし、固くなり、カチカチになっても砕いてチャック付き袋などに水をたっぷり入れておいておくとまた粘土に戻るそうです。
注意①布やガーゼを濡らし、粘土をくるんで保存するとカビが生えることがあるのでしないでください。
注意②粘土を水道に流すと詰まりますので、たくさん手に粘土が付いていたら手を布などで拭いてから手を洗ってください。