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経度への挑戦

『経度への挑戦』/デーヴァ・ソベル 著/藤井 留美 訳/KADOKAWA/角川文庫

【私の一冊】石井/アテンダントグループ(総合案内、発券業務、団体予約受付管理など、科学館の窓口となる仕事をしています)

『経度への挑戦』/デーヴァ・ソベル 著/藤井 留美 訳/KADOKAWA/角川文庫

 地球儀を頭に思い浮かべた時、赤道を基準として赤道と平行な横の線が緯度、そして南北を繋ぐ縦の線が経度です。大航海時代、緯度は北極星の高度を測ることで求められてきました。しかし、正確な経度の測定方法を確立するのは容易ではありませんでした。その為、ヨーロッパ諸国では遭難事故が相次ぎ、イギリスでは経度を求める正確な方法を考案した者に高額な賞金を設定したのです。

 すると、多くの天文学者が天体の運行でその答えを見つけようとしました。しかし時計職人ジョン・ハリソンは船上で正確な時刻を計ることのできる時計の開発に挑みます。当時の時計と言えば振り子式でしたが、振動に弱く持ち運ぶには不向きだったからです。

 船上でも正確に時を刻む時計は、経度測定にどんな役割を果たすのでしょうか。そしてジョン・ハリソンは巨額な賞金を手にすることができるのでしょうか。

 この本を読むにあたっては、ヨーロッパの時代背景に加え、天文の知識、時計の基本構造や仕組みを理解している方がより深く面白さを捉えることができると思います。物語の中で、それらの解説は出てくるのですが基本的な知識がないとすんなりとは読み進められません。しかしながら、階級の低い大工職人の息子が努力を重ねる姿や天文学者の陰謀など、ジョン・ハリソンの生涯の物語としても楽しめる作品です。