『洞穴学ことはじめ』/吉井 良三 著/岩波新書
【私の一冊】大平/研究・交流グループ(ラボや教室などのイベントの企画・制作・運営、展示室の企画・制作、企画展の企画・制作をしています)
『洞穴学ことはじめ』/吉井 良三 著/岩波新書
著者である吉井良三氏は昆虫学者です。土壌生物であるトビムシの研究から、日本の洞窟生物の研究をたちあげました。本書では、まだ日本では本格的に洞窟内の生物について研究が行われていなかった時代に、様々な洞窟にでむき、真っ暗闇の世界でトビムシ研究に奮闘される姿が書かれています。吉井氏は洞窟探検のパイオニア的存在でもあり、洞窟という特殊な環境下で、様々な危険に立ち向かい、未知の暗黒の世界を探検する様子は、自分もその場にいるような臨場感が味わえます。
私はもともと洞窟好きで、観光地などで洞窟に出くわすと、必ず立ち寄ります。この本を読むまでは、洞窟の生物というと“コウモリ”しかイメージがありませんでしたが、実は他にも小さな生き物の世界が広がっていることを知りました。私は現在、吉井氏と同じくトビムシの研究をしています。今では観光以外に、研究の一環として立ち寄ることも多い洞窟ですが、洞窟に入る度にこの本のエピソードを思い出します。洞窟と生き物が好きな人に、ぜひお薦めしたい本です。