科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

美しい日本語の辞典

『美しい日本語の辞典』/小学館辞典編集部 編/小学館

【私の一冊】成瀬/天文グループ(プラネタリウムでの生解説や、企画・番組制作、図書館等でイベント協力をしています)

『美しい日本語の辞典』/小学館辞典編集部 編/小学館

 科学の本棚に日本語の辞典? …と思われましたか?
 そう、あえての変化球です。

 生解説プラネタリウムでは、星や演出と共に、解説者の語りにお付き合いいただきます。天文学を解説するのも、情景を分かち合うのも、ことば。そのことばの彩りを増やせたら、と思ったときに出会ったのが本書でした。

 「寧日(ねいじつ)」から「べらんめえ」まで、後世に残したい日本語や、擬音語や擬態語、そして“雨・風・雲・雪・空の言葉”も1,530語収録されています。自然を表すことばには、どのように自然をとらえてきたかの人間の視点が内在します。そう、自然科学に大切な、見つめる視点がここにあるのです。しかも日本語の趣や情緒まで。

 例えば雨の名前である青梅雨(あおつゆ)を解説で用いるなら…「今日は雨ですね。…新緑に降り注ぐ梅雨を、青梅雨と呼ぶのだそうです。雨では星は見えませんが、雨上がりには大気のちりが洗い流されたように、すっきりと星が見えたりするもの。青梅雨のあとの星空、楽しみですね」

 知識はもちろん、安らぎや、空を眺める視点にも出会っていただきたいプラネタリウム。ことばを味方にしない手は、ありません。

 プラネタリウムは星を語る場なのに、見る人の気持ちや、解説者の人柄が如実ににじみ出てしまう空間でもあります。ひとときが、どうか少しでも美しくなるように。ことばに悩みことばに助けられながら、日々模索は続きます。