科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

シートン動物記

『シートン動物記』/アーネスト・トムソン・シートン 著/今泉 吉晴 訳/童心社

科学の本棚Ⅱ~科学と女性~
【私の一冊】佐藤 たまき/東京学芸大学 准教授

『シートン動物記』/アーネスト・トムソン・シートン 著/今泉 吉晴 訳/童心社

 小学生の頃、私は生き物についての本をたくさん読んだもので、シートン動物記もお気に入りの1つであった。いかにも強そうなクマやオオカミはもちろん、ウサギやウズラなどの一見弱そうな小動物を主人公にした話も多く、ワクワクしたり泣いたりしながら何度も読み返したものである。シートンがアメリカやカナダで出会った動物との実体験に基づいた作品が大部分であり、原書に忠実な訳本であれば、子供向けに甘く味付けしたおとぎ話ではない。そのため自然の厳しさや人間の残酷さも容赦なく描かれており、シートン自身が語った通り「野生動物の最期は必ず悲劇的」である。しかし、知恵を絞って体一つで逞しく生きる動物の姿は、何とも美しくて気高い。