科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

神秘の島(上)(下)

『神秘の島(上)(下)』/ジュール・ヴェルヌ 著/清水 正和 訳/福音館書店

科学の本棚Ⅱ~科学と女性~
【私の一冊】大石 理子/東京大学宇宙線研究所 助教

『神秘の島(上)(下)』/ジュール・ヴェルヌ 著/清水 正和 訳/福音館書店

 科学書にあまり興味のない子供だった自分にも、「理系の仕事」に心惹かれる読書経験があっただろうか、と考えたときに思い出されたのはこのJ・ヴェルヌの冒険譚である。無人島に漂着した技師サイラス・スミスを中心とする五人は、限られた物資を元に科学知識を駆使して生活基盤を築き上げてゆく。天体観測から島の位置を推定し、島の動植物から食料を確保し、天然資源から生活に必要な道具や設備を作り上げ、未踏地域を探検調査して得た情報を元に仲間と議論して次の行動計画を決定してゆく。科学が本来、より多くの人が安全で便利な生活を手に入れられるようにという切実な目的のために不可欠なものだったことを、大人になって心迷う日にも思い出させてくれる本である。