『学生版　牧野日本植物図鑑』／牧野 富太郎 著／北隆館

【私の一冊】真山 茂樹／東京学芸大学名誉教授

『学生版　牧野日本植物図鑑』／牧野 富太郎 著／北隆館

　大学へ入学したとき、生まれて初めて生物部へ入部しました。すると、そこには、どんな植物でも名前を知っている、歩く図鑑のような先輩がいたのです。そんな先輩のようになりたくて、学生版牧野日本植物図鑑を買って毎日持ち歩きました。

　植物を見つけるたびに図鑑で調べ、説明文に下線を引いたり、採集した植物をページに挟んで後から見直したりしました。そのうち新しい植物に出会うのが楽しくなり、夜眠る前、1ページ目から最後のページまで全部を読むのです。読み終われば朝の5時、外は明るくなっています。図鑑は2年間でボロボロになりましたが、生物の多様性の面白さを教えてくれました。

　分類学者となった今でも、この本は私の宝物です。

↑こちらは2019年多摩六都科学館で開催した「科学の本棚」に展示したパネルです。