『科学の方法』/中谷 宇吉郎 著/岩波新書
【私の一冊】廣澤/統括マネージャー(多摩六都科学館の運営を委任されている指定管理者の責任者です)
『科学の方法』/中谷 宇吉郎 著/岩波新書
かつての科学館は、通常、教科書の分類に沿った展示が伝統であった。物理の部屋、化学の部屋、地学の部屋、生物の部屋といった具合である。70年代後半に県立博物館の設立が全国を一巡し、続いて科学館が数多く誕生することとなった。展示室はそれぞれの展示物に意味を持たせて配置することで成立する。ゆえに、展示ストーリーとかコンセプトに企画設計者は思い悩む。
私が企画に携わった、平成2年9月開館の新仙台市科学館のコンセプトになったのが中谷宇吉郎の『科学の方法』。『物質の科学と生命の科学』の項目をベースにしたもので、これを黒板に書いたとき、ブレスト中のメンバー皆が一斉にこれだと反応し、決定した。生命系は種(しゅ)で、理工系はMKS(メートル・キログラム・秒)の単位を使って、対象物の数値化という科学のもっとも基礎的な方法を使った。
この本は、科学館の企画者・設計者にとってはバイブル。宇吉郎は寺田寅彦の教え子。随筆の手ほどきも受けたのであろう。
写真の中谷教授の名刺は、1994年11月1日、石川県加賀市に開館した「中谷宇吉郎雪の科学館」設置時に娘さんから戴いた私の宝物