科学の本棚~科学と出会う・世界と出会う~

生物の謎と進化論を楽しむ本

『生物の謎と進化論を楽しむ本』/中原 英臣、佐川 峻 著/PHP研究所

【私の一冊】関/多摩六都科学館ボランティア(展示室で来館者と接し、新しい遊びを開拓しています)

『生物の謎と進化論を楽しむ本』/中原 英臣、佐川 峻 著/PHP研究所

 この本を読んだきっかけは、国立科学博物館ボランティアとして来館者からいろいろな質問を受けたことで、十数年前にさかのぼる。

 受けた質問は、ダーウィンの進化論(突然変異、自然淘汰など)をはじめ、①シーラカンスは4億年も進化せず現存するのはなぜ? ②マンモスの牙が長く曲がったのはなぜ? ③キリンの首がなぜ長くなったのか? ④人の遺伝子に細菌の遺伝子が入っていると聞いたことがあるけど本当ですか? ⑤生きた化石と呼ばれるカブトガニ、イチョウの他に何がありますか? ⑥類人猿の中で人間に一番近いのは何ですか? ⑦ミツバチのメスはなぜ子供をつくらないのですか? ⑧なぜライオンのオスは自分の子供以外の子供を殺すのですか? ⑨ウイルスは生物ですか無生物ですか? ⑩大腸菌O-157が赤痢菌から進化したと聞きましたが本当ですか? これら多岐にわたる質問に、易しく回答するヒントとして手に取ったのがこの一冊だった。

 本書の中で特に面白かったのは、南アメリカのハキリアリの仲間が、特殊なキノコを地下の巣の「菌園」と呼ばれる“農場”で育てているというところ。キノコがつくる「ゴンギリディア」という物質がアリの食糧となるため、菌の生育に必要な植物の葉を集め、また、病原菌からキノコを守るため抗生物質を利用している。さらに驚かされるのは、キノコ農園だけでなく、アブラムシ(アリマキ)牧場も経営しているという。ハキリアリはアブラムシから分泌される糖分を利用するという共生をしているが、これらの行動はハキリアリがもっている遺伝子に支配されていると考えられているとか…
ほら、どんどん読みたくなるでしょう?